東京銭湯-TOKYO SENTOは、東京の銭湯文化を案内するオウンドメディアです。東京都内の銭湯の現状数は、2007年から半減しました。2022年時点の数は、462施設になっています。
この東京銭湯のユニークな点は、若者向けにも丁寧に作り込まれていることです。近年円安の追い風もあり、日本を訪れる外国人が増加しています。そしてYouTube上では、お寿司や和牛に感動する外国人を伝える動画が人気です。「食」は日本が世界に誇れる素晴らしい文化ですが、実は「銭湯」も外国人の感動を巻き起こしています。建物が日本建築様式だったり、富士山等のペンキ画などもユニークな魅力です。また近年はスパのようにオシャレにリニューアルする施設も増えています。
そんな銭湯は、近くにあれば行きたくなる魅力があります。近年はサウナを併設していたり、24時間営業のものもあります。
本記事では、そんな銭湯をテーマにしたユニークなオウンドメディア『東京銭湯-TOKYO SENTO』を分析したいと思います。
Contents
1. 東京のおすすめ銭湯がわかる東京銭湯-TOKYO SENTOとは
TOKYO SENTOは、2015年にスタートしたオウンドメディアです。株式会社東京銭湯が運営しており、東京のおすすめ銭湯が把握できます。ページ右側には「SEARCH枠」があり、その下には新宿や池袋、渋谷、浅草、上野、蒲田などの地名で銭湯紹介記事を検索できます。
このサイトの目的は「銭湯業界の活性化」です。またユニークな視点として興味深いのは、「銭湯=地域のコミュニティ」として捉えていることです。銭湯は体を清潔にするだけでなく、地域の人が気軽に交流できる場所です。いわば昔からよくいわれる“裸の付き合い”ができるコミュニティです。
しかし現状は、週に1軒のペースで廃業が発生しています。その理由は、利用者の減少です。それを解決するために、TOKYO SENTOは集客用のポータルサイトを目指しています。特に10代から30代の若年層をターゲットに、銭湯文化が次世代に引き継がれるためのオウンドメディアとして存在感を示しています。
2. 東京銭湯-TOKYO SENTOが誕生した理由
先述した通り、日本の銭湯は減少しています。その大きな要因は、各家庭にお風呂が普及したことです。その結果収益性が悪化し、同時に後継者不足や設備の老朽化という問題も追い討ちをかけました。しかし銭湯は、実は地域のコミュニケーション交流の場としての機能も果たしてきました。すなわち銭湯の減少は、地域のコミュニティの劣化につながるのです。
そこで課題解決には、新たな客層として「若年層」を取り込むことが設定されました。そのためには「知ってもらう」「来てもらう」「通ってもらう」ことが重要なのです。それが実現できると、地域のコミュニティの活性化につながります。また銭湯の収益モデルが見直され、再投資の機会の創出にもつながります。そういう意味では、この東京銭湯は、銭湯の課題解決ソリューションともいえます。
3. 東京銭湯-TOKYO SENTOのグローバルメニュー
TOKYO SENTOサイトのグローバルメニューは、以下の構成になっています。特に興味深いのは、「スペシャル」コーナーです。「女性モデルへの入浴インタビュー」や「日本最年長の銭湯絵師」などが掲載されています。またせんとも(銭湯友達)のOFF呂会の様子のレポートも楽しそうです。
メニュー名 | 内容 | |
1 | 東京銭湯について | 東京銭湯のプロフィールが紹介されています |
2 | 提携銭湯について | 提携銭湯の「梅の湯」がが紹介されています |
3 | 銭湯日誌 | 「喜楽湯」「梅の湯」の模様が掲載されています |
4 | 記事カテゴリー | 「銭湯ニュース」「お知らせ」「銭湯レビュー」などがあります |
5 | 銭湯マナー | かけ湯やタオルをお湯にいれないなどのマナーが紹介されています |
6 | 記事ランキング | 記事の人気ランキングが紹介されています |
7 | 記事ライター一覧 | 記事のライターが紹介されています |
8 | お問い合わせ | お問い合わせや意見、情報提供の窓口です |
4. 東京銭湯-TOKYO SENTOの魅力的なコンテンツとは
ここでは、銭湯文化復活の起爆剤オウンドメディアである「TOKYO SENTO」の魅力にはどんなものがあるのでしょうか。印象的だったコンテンツをご紹介します。
4-1. 日本最年長の銭湯絵師と新弟子のインタビュー
銭湯の魅力の一つは、壁一面に描かれた絵です。代表的なのは、日本のシンボルである富士山です。そしてその絵を描く日本最年長の銭湯絵師の新弟子になったのが、勝海麻衣さんです。記事当時は東京芸術大学に在籍しながら、ファッションモデルとしても活躍している女性です。そんな二人が登場するのが、『日本最年長の銭湯絵師と平成生まれの新弟子「はじめての1年」を語る』という記事です。
過去に弟子をとったことがなかった丸山さん。18歳で銭湯絵の世界に入って65年の大ベテランです。そんな丸山さんに飛び込んだ勝海さんは、初対面の時に自分の絵の作品を持っていったそうです。そんなエピソードにも、本気度が感じられます。
丸山さんの「グラデーション、ぼかし、色使い、構図と技術的なところが多い一方、シンプルにしないといけないのが難しい」という言葉がリアルです(笑)。また勝海さんの「とにかく描くスピードが速いんです。以前1枚を3時間半、男湯と女湯で合わせて8時間くらいで描いたことがあって、本当に驚きました」というコメントは、理想の子弟関係を感じさせるものでした。
4-2. スペシャル対談/ホリエモン✕銭湯!
この記事は、銭湯の経営者とホリエモンこと堀江貴文氏が、銭湯の今後について語る企画です。銭湯メディア『東京銭湯-TOKYO SENTO』の2周年特別企画として行われました。全2回で、この記事は後編です。この対談で興味深いのは、堀江氏が銭湯ビジネスの現状を把握し、どんどん改善アイディアを出してくる点です。具体的には、客単価や1日の来客数、1日10万円貸切サービス、無人化など、どんどん出てきます。その改善案に対し、銭湯の経営者が実情も交えて答えていきます。
面白かったのが、堀江氏の「会員制の導入」提案です。スマホでアンロックするデバイスを全員に持たせる仕組みです。それに対し、「みなさん番台がやりたいんですよ」というリアクションが秀逸です(笑)。
堀江氏の「敷居が高い」「営業時間が短い」「アメニティが揃ってない」「食い物屋もない」という指摘は、非常に的を得ている気がします。こうした外部の人の対話を通じて変革を起こせば、銭湯は伸びしろのあるビジネスモデルではないでしょうか。そう感じることができる良質な記事だという印象を持ちました。
4-3. 府中湯楽館 桜湯リニューアル物語
東京都府中市のマンションの1階にある桜湯。この銭湯は、いつも地元の方で賑わっていました。しかし2017年夏にオーナーが倒れ、1年以上の休業に追い込まれてしまいました。その再建に立ち上がったのが、佐伯雅斗さんです。佐伯さんは東京都公衆浴場業生活衛生同業組合の常務理事で、ご自身も立川の銭湯『立川湯屋敷 梅の湯』三代目です。佐伯さんはサラリーマン経験を積んだ後、1995年実家の梅の湯の仕事に就きました。
その時目指したのは、「お客さんが居心地よく、長く滞在してくれる空間」です。具体的には、大量の漫画やかき氷、生ビール、レトロなテーブルゲームを提供しました。漫画喫茶のような空間は話題になり、クチコミで来店者は増加しました。その結果、梅の湯は遠方からもお客さんが来るようになり、経営が安定するようになったのです。そして2018年、桜湯の再建を託されます。
佐伯さんが現状をチェックすると、銭湯の屋内にはカビが発生し、洗濯機は動きませんでした。また換気扇や配管もかなりガタがきていたそうです。この状況に対し、佐伯さんは「むしろ燃えてきた」そうです(笑)。玄関からの動線を見直し、梅の湯の時と同様に快適な空間に変貌させます。金魚が描かれた新ロッカー、液晶テレビ、本棚にはコミック、そして喫煙室まで設置しました。こうして「大正ロマン」をコンセプトとした新生桜湯は、遊び心が詰まった銭湯に生まれ変わりました。
5. まとめ
オウンドメディアは、一つのテーマにそって情報発信することで、ターゲットへの訴求力が強化されます。この『東京銭湯-TOKYO SENTO』サイトは、銭湯の現状に危機感を持ち、それをなんとかしたいという“銭湯愛”に満ちています。
特に10代から30代の銭湯を知らない若者に、少しでも知ってもらい、体験してもらい、ファンになってもらいたいという想いが伝わってきます。このサイトの目的は、自社物件を含む現存の銭湯への送客だと思います。しかし堀江さんの提案のように、他にもマネタイズ方法はたくさんあるように思います。
銭湯は、単なる施設の一つではなく日本の文化遺産であり、地域コミュニティの核です。だからこそ、その減少は地域の大きな損失といえるでしょう。その復興に向けて、この『東京銭湯-TOKYO SENTO』というオウンドメディアには期待したいですね。