事業計画書

事業計画書とは?融資や資金調達に効く書き方を解説します!

事業計画書は、事業内容や将来の収益見込みなどを記した文書です。自分の頭の中で事業を整理したり、金融機関から融資を受ける時に役立ちます。

また事業進行中も、経営が計画通りに進捗しているかをチェックするのにも効果的です。これから起業を検討されている方は、事業計画書の作成をおススメします。

本記事では、事業計画書の関する重要ポイントを解説します。

 

1. 事業計画書の存在意義

必要性

まず最初に、事業計画書の必要性について解説します。

1-1. 事業の動機を明確にする

事業には、「事業への熱い想い」が必要不可欠です。それを事業計画書に落とし込む必要があります。

例えば、「なぜ、その事業をあなたはしたいのか?」です。歴史上の有名な事業家の多くは、自らが立ち上げたビジネスの動機があります。

一例を挙げると、日本でも大人気のスターバックスの事例があります。ハワード・シュルツがイタリアに出張した時、ミラノのエスプレッソバーの人気に注目します。当時ミラノには1,500軒ものエスプレッソバーがあり、その味に感銘を受け、シアトル
でも同様のコーヒー文化を展開できるという確信を持つのです。

このように、過去に成功した多くのビジネスは、事業動機が素晴らしい個人の原体験に基づいています。だからこそ、事業計画書には事業に賭ける情熱を書きましょう。

1-2. 融資で資金調達をする

起業したての企業には、資金がないのが普通です。そこで、元本と利子の返済を前提に金融機関からお金を借りるのが融資です。

融資のメリットは、経営の自主性を維持しながら、必要な資金を調達できることです。融資元は銀行や信用金庫の場合が多く、多額の資金を一度に借りることが可能です。

1-3. 出資で資金調達をする

返済する必要がない資金を調達できるのが、出資です。ただし、出資者への見返りに株式の提供が基本となります。

出資で資金調達をするためには、将来性が感じられる精緻な事業計画書の作り込みが必要です。出資の種類としては、「ベンチャーキャピタル」や「個人投資家」、「クラウドファンディング」などがあります。

 

2. 事業計画書の書き方

事業計画書の書き方

2-1. 企業概要

企業概要では、「住所」や「連絡先」、「代表取締役」や「取締役」、「事業内容」や「従業員数」などの情報を記載します。

創業時の事業計画書の場合、代表者の経歴が非常に重要になります。なぜならば、代表者の過去の経験やノウハウが、創業後の収益と相関関係があるケースが多いからです。

融資担当者や出資者は、代表者や創業メンバーの経歴は必ずチェックします。だからこそ、過去のビジネス経験や実績をできるだけ具体的数字を交えながら、記載することをおススメします。

創業者や創業メンバーの経歴は、事業の将来収益を予測する重要な要素なので、しっかり書き込む

2-2. 事業コンセプト

この事業を通してやりたいことを、シンプルに表現しましょう。例えばスターバックスは、「家庭でも職場でもない第3の空間を提供する」というコンセプトのもとに運営されています。

事業コンセプトは、創業者の想いと世の中での新しさが両立しているのが理想です。“事業を通じて、世の中にどう貢献したいのか”という視点も重要です。

2-3. 事業概要

今度どのような事業を展開しようとしているのかを、できるだけ具体的に記入します。重要なポイントは、以下になります。

① 「誰に」
② 「何を」
③ 「どのように伝えるか」
④ 「競合優位性」

「誰に」は、ターゲットのことです。男性か女性か、何歳か、どんな志向を持っているかなど書いてあるとイメージしやすいでしょう。更に深く掘り下げる「ペルソナ」の設定も効果的です。

「何を」は、サービスや商品のことです。ここは事業の核となる部分です。当然ですが、商品力やサービス力がないと、事業は成功しません。できるだけ詳しく書きましょう。製品の場合は、ラフスケッチなどを添付するとイメージがしやすくなります。

「どのように伝えるか」は、プロモーションです。現代のプロモーションには、WebサイトとSNSの連動は必須です。特にSNSは、インスタグラムやツイッターをいかに活用するかが重要です。

最後は、「競合優位性」です。従来のサービスとどう違うのか、そのポイントを書き込みます。特に重要なのが、「新しさ」です。

2-4. 従業員数

現在の従業員数だけでなく、今後の事業の発展状況に合わせた人員計画も入れましょう。ただ販管費も増えるので、損益分岐のバランスも意識しましょう。

2-5. 市場環境

融資担当者や出資を検討しているベンチャーキャピタルは、「代表がどれほど市場に詳しいのか」を必ずチェックします。また該当市場での経験がなくとも、「熱心に調べ上げているかどうか」を注視します。

どんな事業スキームであれ、その市場の現状認識が甘いと成功することはできません。先行事業者と競争し、差別化を図り、新規で顧客を獲得していくためには、正確な市場分析は必要不可欠です。

市場調査の方法としては、「Webでの各種指標調査」や「ターゲット層のヒアリング」、「SNSを活用したモニタリング」など様々な手法があります。

まずはすぐにできる手法として、競合上場企業のIR資料を分析するという方法があります。上場企業は、株主に対して業績情報を定期的にリリースします。多くの資料には、市場環境の最新状況分析が記載されているので参考になります。

2-6. 自社サービスのポジショニング

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉があります。敵の実力と自分の実力を正確に分析できていれば、決して負けることはないという意味です。

戦に限らず、ビジネスも同じことがいえます。ここでの「敵」とはベンチマークする「競合企業」です。競合企業の分布図を作成し、その中で自社が目指す位置を明確にします。

事業計画書 サービスのポジショニング図

高級車ブランドのポジショニング

2-7. ビジネススキーム

ビジネススキームとは、全体的なビジネスの枠組みのことです。全体を俯瞰したもので、「商品開発」や「マーケティング」、「販売戦略」など全てが含まれます。

つまりビジネススキームのページ1枚を見ただけで、ビジネスの全体像が把握できるようにします。販売戦略の詳細は、別途記載するとビジネス成功イメージがより湧きます。

2-8. 販売戦略

販売戦略とは、顧客に対して自社商品をどうアプローチするのかというものです。具体的には、「市場分析」や「競合分析」、「顧客ニーズ分析」、「アクションプランの策定」などを行います。

有名な考え方として、「ランチェスター戦略」があります。これは、弱者が強者に勝つためにはどう戦えばいいのかという戦略方法です。

自社を取り巻く市場環境を把握するには、「3C分析」があります。3Cとは、Customer(顧客)、Competior(競合)、Company(自社)です。競合企業については、「売上」や「利益」、「顧客数」だけでなく、「顧客単価」や「販売ルート」、「営業体制」まで分析します。

自社の内部環境と外部環境を、プラスとマイナスに分けて分析するのが「SWOT分析」です。Strength(強み)とWeakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取っています。自社の商品の強みと弱み、成長機会、リスク外部環境を分析します。

同じく内外環境を分析するのが、「4P分析」です。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販売促進)の略です。製品では、デザインや性能、パッケージなど細部まで分析します。また販売促進では、広告手法や利用メディアを分析します。

2-9. 財務計画

大きく「売上計画」と「利益計画」、「資金調達計画」の3つに分かれます。「売上原価」や項目を記した「必要経費」は、具体的な金額を記すことが重要です。現在進行中の資金調達計画も記します。

損益分岐点のラインを明示し、いつまでに黒字を達成できるのかの予測も盛り込みましょう。

2-10. 運営体制

「事業計画を実現する体制づくり」に関して記載するのが、運営体制のページです。事業を成功させるには、優秀な人材とマネジメント体制が必要不可欠です。

採用を含めた「人員計画」や「人員配置」を、組織図とともに記載します。特に専門性の高い人材をいかに採用できるかは、事業の成否に大きな影響を与えます。

 

3. アメリカの事業計画書

アメリカの事業計画書

資本主義大国アメリカの事業計画書は、どのような構成になっているのでしょうか。ここでは、ジェトロ(日本貿易振興機構)が作成した「米国事業開設、事業計画書の作成方法ガイドブック」が非常に参考になります。

ジェトロのサンフランシスコ・センターが作成したものなので、米国事情をかなり反映されたものといえます。特に重要なのが、「米国側の視点に基づき、検証・確認・整備します」と明言している点です。

3-1. ロードマップの必要性

ロードマップの作成作業は、会社の事業を客観的に見直し、今後の見通しを立てる良い機会になります。「米国のように複雑かつ多種類のビジネスが入り乱れる市場において、会社のブランドや製品を広めるには、周到な計画が必要です」と明記されています。

日本とは異なる事情があるとはいえ、競争が激しい米国市場レベルで事業計画を検討することには気づきが多いと思われます。

ロードマップのポイントとして、「実際のニーズに適した製品か」「競合製品との差別化はできているか」「目標や戦略を他者にどのように伝えるか」が指摘されています。また「プロジェクトの進行は順調か」「スケジュールより進んでいるか?遅れているか?」といった短期・長期の目標を促す効果も解説されています。

3-2. 会社の弱みについて

「現在の会社の弱みを明確に理解しているか?」という問題提起は、かなり重要です。事業計画書を書く段階では、前のめりになりがちですが、自社の弱点を正確に把握することは、事業の成功には欠かせません。

「会社の弱みは、何らかの不足のある製品や経営陣内の問題など、会社内部に起因しているのかも知れません」「どのような性質の弱みであっても、これらを明確に把握していれば、それに対応できる戦略を策定し、今後起こり得る問題を可能な限り抑えることが可能です」という指摘は、本質を突いています。

3-3. 知的財産について

人の知的創造活動の成果について、一定期間独占権を与えるのが知的財産権制度です。このうち、「特許権」や「実用新案権」、「意匠権」と「商標権」の4つは「産業財産権」といい、特許庁が管理しています。

知的財産は、事業の競争力の源泉になるだけでなく、継続的な発展には欠かせないものです。逆に権利化されていない知的財産を競合企業に真似されても、法律上文句は言えません。

ちなみに日本における特許出願人ランキング(2018年)は、1位はキャノン、2位はトヨタ、3位はパナソニック、4位三菱電機、5位は富士通です。キャノンの年間ライセンス収入は、100億円を超えています。

 

4. 事業計画書のまとめ

事業計画書を作成することには、数多くのメリットがあります。実際に計画に落とし込むことで、今まで気付かなかった点も浮き彫りになってきます。

また自分一人で考えるのではなく、回りの人を巻き込むことでより客観性の高い説得力のある事業計画書を作成することができます。ポイントを、以下に記します。

① 事業計画書は、資金調達のために必ず必要である
② 事業計画書は、マネジメントに活用できる
③ 事業計画書は、既存事業の再確認にも活用できる
④ 資金調達では、融資担当者のポイントを押さえる
⑤ 海外の事業計画書にも参考になるポイントはある

事業企画書の役立つテンプレートは、「企画書デザインで訴求力UP!無料テンプレートも紹介します」で詳しく紹介しています。是非、活用下さい。

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