Limeの成長戦略とは?訪日ラボに掲載されたTOPインタビュー
電動キックボードを街中で見かける機会が増えています。日本における電動キックボードは、株式会社Luupが先鞭をつけました。具体的には、2020年5月25日に渋谷区、目黒区、港区、世田谷区、品川区、新宿区で提供開始されました。当時はコロナ禍であり、感染拡大の中、交通機関の見直しが検討されていました。当時厚生労働省は、3密を避けるための交通手段として、徒歩が自転車を活用した移動が推奨されていました。そのような背景をもとに、電動キックボードサービスが登場したのです。
その5年後の2025年8月、株式会社Limeが日本に上陸しました。Limeは、電動モビリティシェアで世界No.1を誇る企業です。アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコに本社を構え、機体を自社開発しています。また株主にはGoogleやウーバー、KDDIなどが顔を揃えています。このLimeの事業戦略について、貴重なインタビュー記事が訪日ラボに掲載されました。そのポイントを解説します。
Contents
1. 電動キックボード業界の現状
世界の電動キックボードの市場規模は、2022年時点では約25兆円でした。しかしその後は大きく伸び、2030年には約52兆円と予想されています。ここでは、まず電動キックボードの現状のポイントを解説します。
1-1. 電気で動き二酸化炭素を排出しない
電動キックボードが普及している大きな背景の一つが、二酸化炭素を排出しないことです。電動キックボードは文字通り電気で動き、クルマのようにガソリンは要りません。そのため二酸化炭素などの排気ガスを排出せず、温室効果ガス(GHG)の削減効果があります。電動キックボードの普及は、脱炭素社会に切り替わる大きな原動力の一つになりつつあります。
1-2. 鉄道やバスではカバーできないエリアに行ける

人々の移動手段としてよく使われるのは、鉄道やバスです。しかし、鉄道やバスでは行きにくい場所もあります。そういった場所に気軽に移動できるのは、電動キックボードの大きな魅力です。例えば東京の場合、鉄道は放射線状に延びていますが、縦に移動できる線はあまりありません。例えば中野から笹塚に行きたい場合、電動キックボードなら最短コースで移動できます。このような効率的な移動ができるのは、大きなメリットです。
1-3. 坂道でも無理なく移動できる

高齢化社会を迎えた日本で、移動の時の困難さの一つが坂道です。実際郊外の住宅街でも、坂道の多いエリアは空き家率が高くなる傾向があります。がしかし電動キックボードはハンドルを回すだけで前に進むので、坂道でも疲れずに簡単に移動できます。
足腰に負荷がかからずに移動できる交通手段は、高齢化社会に入った日本においてニーズが高いといえるでしょう。しかも今後は座って移動できる着座式の電動キックボードも増えるので、利用率はより高まると予想されます。
1-4. ユーザーの交通マナーが課題に
2023年7月1日の道路交通法改正で、特定小型原動機付自転車(特定原付)という車両区分が新設されました。これは主に電動キックボードを念頭にしたものです。具体的には、16歳未満の運転は禁止、免許は不要でヘルメットは努力義務です。その結果、電動キックボードのユーザーが大幅に増加しました。ただし、その交通マナーに課題があるのも事実です。以下は、特定小型原動機付自転車関連事故の発生状況です。
また特定小型原動機付自転車の事故発生場所は、338件中224件の72%が東京です。そして自動車事故と比較すると、単独事故や対自転車事故、対歩行者事故の割合が高い傾向があります。
2. Limeの事業が飛躍したキッカケとは

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2-1. カーボンフリーでサステナブルな未来をつくる

Lime株式会社は、大切にしている事業コンセプトがあります。それは「「電動マイクロモビリティが公共交通手段として定着し、カーボンフリーでサステナブルな未来をつくる」というものです。現在、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、スペインなど、世界5大陸・30カ国以上で展開しています。またアプリのダウンロード数は6,500万件を突破しており、電動モビリティシェアにおいて世界1位です。
Limeの2017年3月の創業時は、電動ではない自転車125台のスタートでした。その自転車は「LimeBike」という名前で赤字でした。転機を迎えたのは、ウェイン・ティン氏がCEOとしてジョインし、以下に注力したことでした。
・ユーザーが必要とするときに車両が存在する
・政府や自治体との関係構築
・自社での製品製造
2-2. 黒字化の転機はスクーターの自社開発

またLimeは、国土交通省や東京都、警察庁、警視庁と合同試乗会を実施しています。そういった場面では、「他のものと乗り心地が全く違う」といった感想を頂いているそうです。
ちなみに黒字化の大きな要因は、スクーターの自社開発でした。今回のインタビューでテリー氏は、「黒字化はスクーターの自社開発で1台あたり5年間使えるようになったことが大きい。以前の車両はは30日しか使えなかった」と語っています。また「耐用年数の増加は、SDGs的な観点からも良かった」とも話されています。
3. Limeの成長戦略とは
では、そんなLimeの成長戦略はどのようなものなのでしょうか。以下にポイントを記します。
・今後は大阪、京都へ進出
・2030年には全国展開
・危険運転をテクノロジーで解決する
・ヘルメット着用をアプリで認識し料金を割引にする
・ホテルや民泊、商業施設や小売施設への設置の拡大
・観光地の体験価値の向上を図る
・ライド・グリーンを推進し、時間ロス・経済ロス・CO2を減らす
インタビューの中で、非常に印象深い言葉がありました。それはテリー氏の「我々はその国の課題に対しての貢献を分析してから参入している」というものです。それによると、Limeが解決できる課題を以下の6点に設定しているとのことです。
①交通安全
②オーバーツーリズム
③駐車場不足
④人出不足
⑤ラストワンマイルの課題解決
⑥CO2削減
これらの課題がLimeの事業拡大とともに推進されると、理想にWin-Winの関係になれますね。

