電動キックボードの免許はなぜ要らない?交通ルールも解説します
近年、電動キックボードを利用する方が増えています。皆さんも、街中でスイスイと移動するシーンを見かけた経験はあるのではないでしょうか。このように新しい移動手段として、電動キックボードの存在感は日々増しています。
しかしいざ自分も利用しようと思った時、「免許は必要?」という疑問を持つ方が多いのも事実です。また電動キックボードには2種類あり、免許が要らないのは特定小型原動機付自転車という車両です。
また歩道の走行や二段階右折などの交通ルールの理解も大切です。そして万が一事故を起こした時に、対応方法や賠償リスクも事前に知っておくべきです。このように、快適に移動するだけでなく、周辺知識を事前に知っておくことがとても大切です。
そこで本記事では、免許が不要の理由と、その周辺情報をわかりやすく解説してます。ぜひ快適な電動キックボード利用に役立てて頂ければ幸いです。
Contents
1. 移動の概念を変える電動キックボードとは

環境に優しく手軽な移動手段の電動キックボードは、モーターを動力源とする二輪車両です。以前は立って乗るタイプが主流でしたが、最近は座っても乗れる座席付きのタイプが人気です。このシート付のタイプが出たことで、通勤用に使う方や主婦の方の利用が増えています。
1-1. 手軽さと環境負荷の低さが特徴
電動ボードの多くは、折りたたんで持ち運びできます。そのため、電車やバスなどの交通機関との連携が簡単です。一方電動キックボードのレンタルサービスは、折りたたみではなく、乗った時の安定性を重視した設計になっています。
また自動車やバスと異なり、排気ガスをほとんど出さないのも大きな特徴です。都市部の移動における環境負荷軽減に貢献できる交通インフラといえます。特に都市部に住む20~30代にとって、駅までのちょっとした距離やバスにないルートへの移動手段として、普及が急速に進んでいます。
1-2. 道路交通法改正前と区分と課題
道路交通法の改正前は、そのモーターの出力に応じて、「原動機付自転車」(原付)と「自動車」に分類されていました。原付の場合は原付免許が必要で、車道の走行が原則でした。またヘルメットの着用義務など、自動車やバイクと同じ厳しいルールが適用されていました。このルールが、手軽な移動手段としての電動キックボードの普及を妨げる大きな要因となっていたのです。
2. 2023年の道路交通法改正の背景

2-1. 世界的な電動キックボードの普及の波
欧米諸国やアジアの主要都市では、電動キックボードのシェアリングサービスが普及しています。そして今やその存在は、都市交通の一翼を担っています。そこで日本でも、この新しい移動手段への需要が高まり、規制緩和を求める声が大きくなりました。特にMaaS(Mobility as a Service)の推進や、観光地での新たな移動手段の提供といった社会的なニーズが、法改正を後押ししました。
2-2. 「特定小型原動機付自転車」という新区分の誕生
従来の電動キックボードの多くは、原付に分類されていました。また免許や走行ルールの点で、利便性が低いとう課題がありました。そこでこれらを解決するため、2023年7月1日に改正道路交通法が施行されました。
この改正の最大のポイントは、一定の規格を満たす電動キックボードを「特定小型原動機付自転車」という新たな車両区分として定義したことです。この新しい区分ができたことで、従来の原付とは異なるより柔軟で手軽な走行ルールが適用されることになったのです。これが、「電動キックボードは免許不要」になった背景です。
3. 免許不要な特定小型原動機付自転車の条件
特定小型原動機付自転車として認められ、免許不要で16歳以上が運転できるためには、以下の全ての基準を満たしている必要があります。
3-1. 特定小型原動機付自転車となるための6つの条件
特定小型原動機付自転車の条件
① 定格出力/0.60ワット以下であること
② 最高速度/時速20㎞以下であること
③ 車体の大きさ/
④ 構造/走行中に最高速度の変更ができないこと
⑤ 保安基準/前照灯、尾灯、制動灯(ブレーキランプ)、方向指示器(ウィンカー)、警音器(ホーン)などの特定小型原動機付自転車の保安基準を満たしていること
⑥ 識別表示/最高速度表示灯(緑色)が備えられていること
3-2. ナンバープレートと自賠責保険の義務
特定小型原動機付自転車は、公道を走行するために以下の措置が義務付けられています。
3-2-1. ナンバープレートの取得
市区町村への届出を行い、専用のナンバープレート(特定小型原動機付自転車用)を取得します。そして、車体の見やすい位置に取り付ける必要があります。
3-2-2. 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)への加入
万が一の事故に備え、自賠責保険への加入が義務付けられています。自賠責保険とは、自動車やバイクの所有者に法律で加入が義務付けられている強制保険です。例えば交通事故の被害者を救済することを目的とし、対人事故による損害賠償を補償します。補償の範囲は、交通事故で他人を死傷させた場合の「被害者の身体に対する損害賠償」のみを補償します。運転者自身のケガや、物損事故は補償の対象外になります。
4. 電動キックボードの安全な乗り方

特定小型原動機付自転車は、免許不要になったとはいえ、道路交通法上の車両です。例えばルールを知らずに運転すると、罰則の対象となるだけでなく、重大な事故につながる可能性があります。
4-1. 基本の走行ルールについて
特定小型原動機付自転車は、原則は車道もしくは自転車道走行です。この場合、時速20kmが上限になります。例えば時速20kmで遠くを目指すというよりは、徒歩の延長という感じでしょうか。路駐している車がある場合、歩道を押して回避することができます。そういった小回りのきく移動手段としての活用が合うと思います。
4-2. 歩道走行の条件
特定小型原動機付自転車は、特例として歩道走行が許可される場合があります。具体的ポイントを以下に記します。
4-2-1. 最高速度表示灯の点滅
車体に取り付けられた緑色の最高速度表示灯を点滅させます。そうすることで、特例モード(歩道走行モード)であることを示します。
4-2-2. 最高速度の制限
特例モードの走行では、最高速度が時速6km以下に制限されます。
4-2-3. 最高速度の制限
歩道では、歩行者の通行を妨げないように細心の注意を払って走行する必要があります。歩道での走行については、『歩道で電動キックボードは大丈夫?走行できる標識は要チェック!』で詳しく解説しています。ぜひ、参考にして下さい。
4-3. その他の必須の交通ルール
4-3-1. 酒酔い運転、酒気帯び運転の禁止
電動キックボードの事故の原因の一つが、酒酔い運転と酒気帯び運転です。しかも大きな事故につながりやすいという傾向があります。例えば自分自身のケガだけでなく、相手にもケガを負わせる危険性があります。また飲酒運転をする可能性のある人に電動キックボードを提供したり、酒類を提供する行為も禁止されています。
4-3-2. 二人乗りの禁止
二人乗りも重大事故につながる可能性のある禁止行為です。例えば2021年5月、二人乗りをしていた男女が、歩道で女性と衝突する事故が起きました。しかもこの時、女性は首の骨を折る重傷を負ったのです。その結果、運転者の男性は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致傷)等の疑いで逮捕され、罰金50万円の略式命令を受けました。このように、電動キックボードの二人乗りは非常に危険な行為ですので、絶対しないようにしましょう。
4-3-4. 信号無視や一時不停止の禁止
道路標識等により一時停止すべきとされている場合、停止線の直前で一時停止しなければなりません。また停止線がない場合は、交差点の直前で一時停止する必要があります。違反した場合、反則金は5,000円になります。
4-3-5. ヘルメットは努力義務
特定小型原動機付自転車の運転者に対して、ヘルメットの着用は努力義務とされています。ただし安全のためには、着用することが強く推奨されています。万が一の事故の際、ヘルメットは頭部を保護する最も有効な手段であるため、自身の安全のためにも着用を強くおすすめします。
5. 電動キックボードのレンタルサービス活用術

電動キックボードの免許不要化により、個人で購入するだけでなく、シェアリングサービスを利用する手軽な方法も普及しています。20~30代の読者にとって、購入前のお試しや、旅先での移動手段として最適です。
5-1. レンタルサービスを利用する流れ
まずは携帯電話に専用アプリをダウンロードし、氏名や連絡先、支払い方法を登録します。また16歳以上であることを証明するため、身分証明書(運転免許証など)の提出と、交通ルールに関する簡単なテストを受けます。
次にアプリのマップで、近くの利用可能な電動キックボードが駐輪されているポートを検索します。そして車体に貼付されているQRコードをアプリで読み取り、ロックを解除してレンタルを開始します。その後道路交通法を遵守し、安全に走行します。ここではヘルメットの着用を推奨します。最後に、指定されたポートまで移動し、再度アプリでロックをかけて返却手続きを完了します。
5-2. 人気のレンタルサービスについて
日本では、世界No.1シェアのLimeや、ポート数No.1のLUUPが人気です。また神奈川県の海沿いで展開するサンオータスや、沖縄で展開するRimoなどがあります。
電動キックボードの人気レンタルサービスについては、『電動キックボードレンタルサービス早分かり!ポイントを解説!』で解説しています。ぜひ、こちらも参考にして下さい。
6. 原付免許が必要なケースとは
全ての電動キックボードが免許不要になったわけではありません。前述の「特定小型原動機付自転車の条件」を満たさない車体は、引き続き従来のルールが適用されるので注意が必要です。
6-1. 従来の「一般原動機付自転車」として扱われる場合とは
以下のいずれかに該当する電動キックボードは、「一般原動機付自転車」(原付)として扱われます。
原付として扱われる条件
① 定格出力/0.60ワットを超える
② 最高速度/時速20㎞を超える(速度制限機能がない)
③ 保安基準/ライト、ブレーキなどを満たしていない
6-2. 原付として扱われる場合のルール
原付として扱われる電動キックボードを公道で運転する場合、以下のルールが義務となります。
原付として扱われる場合のルール
① 運転免許/原付免許以上の運転免許が必須
② ヘルメット/ヘルメットの着用が義務
③ 走行場所/車道のみで、歩道走行は禁止
④ ナンバープレート/原付用のナンバープレート(白色など)を取得
特に個人で電動キックボードを購入する際は、注意が必要です。例えば、その車体が「特定小型原動機付自転車」に該当するのか、「一般原動機付自転車」に該当するのかを、必ず販売店やメーカーに確認しましょう。
ナンバープレートの取得については、『電動キックボードとは?購入のコツやレンタル、交通規則を解説!』でも解説しています。こちらも、参考にして下さい。
7. まとめ
本記事では、2023年7月の道路交通法改正により、電動キックボードがなぜ免許不要となったのか、そして特定小型原動機付自転車として走行するための具体的なルールを解説しました。以下にポイントを記します。
・免許不要の条件/特定小型原動機付自転車に該当する車体(定格出力0.60キロワット以下、最高速度20km/h以下など)のみ免許不要で運転可能
・年齢制限/16歳以上である必要がある
・走行ルール/原則は車道走行(最高速度20km/h)、特例モード(6km/h)でのみ歩道走行が可能
・ヘルメット/努力義務ですが、安全のため着用を強く推奨
電動キックボードは、都市の新しい移動手段として、私たちの生活をより便利で豊かなものにする可能性を秘めています。しかしその利便性を享受するためには、道路交通法で定められたルールを正しく理解し、安全運転を心がける責任があります。
まずはお近くの電動キックボードレンタルサービスを利用してみましょう。そして新しい交通ルールを実践的に学びながら、安全で楽しい電動キックボード体験を始めてみてはいかがでしょうか。
