2013年09月09日

20160222早朝イメージ

インタビューと同時に、撮影も進めていた。

印象的だったのは、早朝5時の現場撮影。カメラマンのSさんと、夜が明けたばかりの薄暗い中、現場へ急ぐ。時期は11月で、吐く息が白い。

Sさんは現場に着くや、すぐ構図をとりにかかる。いろんなポジションを試し、カメラをセットする。その動きが、実に早い。手際が良い。 ふと、カメラを見ると通常の一眼レフとは違う形をしている。箱型で、横溝正史の映画に出てくる写真屋のカメラともまた違う。カメラマンのSさんに聞いてみる。

「これは、スウェーデン製のハッセルブラッドです。6×6cm判カメラで、独特の味があるんです」

ハッセルブラッドはスウェーデンで生まれ、当初はアマチュアカメラマンだった。ドイツののカメラ工場で働いた後、父の会社を引き継ごうとしたがうまくいかず、自分の会社を立ち上げた。第二次世界大戦時、スウェーデン軍はドイツからの輸入が途絶え、困っていた。ある時領空侵犯し撃墜したドイツ空軍の航空カメラが持ち込まれ、これと同じものを作って欲しいとの依頼が来た。その時、ハッセルブラッドはこう言った。

「いいえ、しかしもっと良い物なら作れます」

そして1942年、航空用NK型7×9cmレンズシャッターカメラが誕生した。その後、ハッセルブラッドは最高級6×6cm判カメラの地位を不動のものとする。

もちろん、当時はそんな知識はない。ただ、優れた仕事をするプロの人達は道具にもこだわるということを知った、初めてのシーンだった。

そして何より感動したのは、数日後上がってきた写真のレベルの高さだ。A4判の紙焼きで上がってきたことにもびっくりしたが、何よりその情感豊かな表現力に脱帽した。

デザインにおける写真の影響の大きさは、この時初めて体感した。Sさんからあがってきた紙焼きを、銀座にあるデザイン事務所に持ち込んで打ち合わせをする。所長兼チーフデザイナーでもあるIさんが写真を手に取り、眺めるその表情には、「これはなかなか良い素材ですな」という満足感が読み取れた。

Iさんからデザインカンプが上がり、一方でライターのSさんから順次コピーがあがってくる。コピーチェックをし、順次デザインに流し込んでいく。

ある程度出来上がった段階で、新人研修の講師をして頂いたHマネージャーに社内便で送り、内線をかけてアドバイスを頂いた。この時は、録音できるミニカセットテープレコーダーを用意し、受話器に録音マイクをテープで貼り付け、アドバイスの内容を全て録音した。まるで逆探知している刑事のようだった(笑)。

「写真がいいね。ただ、コピーが議事録になってしまっている。O社長の世界観をどう出していくか。そのトーン&マナーを作っていく必要がある」

当時はHさんのアドバイステープを、毎日繰り返して聞いていた。60分のカセットテープが、4~5本はあっただろうか。その一言一言が、自分の血肉になっていく気がした。

 

つづく