2013年09月02日

20160222スナックママ

翌日から社内にいても頭の中は、スナックの求人広告のことで頭が一杯だった。

当時新人の私にとって、書体や色の指定を学び、媒体規定に従って一人前に広告を制作できるようになることが急務であり、社外のことなど本来やっている余裕はないはずだった。

ただ何となく、この機会が大きな意味を持っているような気がした。報酬はない。リスクは大きい。でも、挑戦する価値はあると思った。

まずは、同業種に近い事例を探すことにした。自分が配属された広告事業部は新卒採用部門だったため、中途採用情報誌Beingのカフェなどの事例を集め、効果が高かった広告を研究した。

同時に、今回の採用主になるスナックのママに、取材をお願いすることにした。採用の背景、ママのキャラクター、時給の設定など、採用の効果に大きな影響を与えるポイントを押さえておきたいと思ったからだ。

取材日当日は、かなり緊張した。入社1年目でスナックの求人広告にトライしたのは、リクルートの歴史上初めてのことに違いない。

「はじめまして。本日は、取材宜しくお願い致します」

「こちらこそ、よろしく。良い人が採れたら、いいわねー」

厚化粧が若干気になったが、初対面のママは、思っていたより気さくな人だった。まずは、今回の採用の背景や現状を聞いた。

 

・お店を一人で切り盛りするのは厳しい

・できればアルバイトを2人採用し、シフトで回したい

・今は新聞のチラシに毎週出稿しているが、応募はなし

 

ママに現状のチラシを見せてもおらうと、A4のモノクロチラシの9分の1スペースに以下のような情報が掲載されていた。

 

・キャッチコピーは、「フロアレディ求む!」

・勤務条件は、「週2日からOK」

・その他の情報は住所と連絡先のみ

 

それらを頭の中で整理しながら、こう考えた。

どんな仕事でもそうだが、特にスナックのような密室の労働環境では、ママとうまくやっていけるかどうかが重要なのではないか?そのためには、ママのキャラクターとお店の雰囲気が滲み出るような広告が、応募者にも安心できるのではないか?

そのチラシの他の広告は、全て写植で打った活字のみ。縦5センチ×横10センチくらいの小さなスペースではあるものの、全て手書きのイラストで図版入稿したものの方が、インパクトはあるかも知れない。

取材を通じて、ママは岡山生まれで、帰省時には愛車のマークⅡで東名高速を時速140キロで帰ること、料理は肉じゃがを作るのが得意等、いろんな話を聞いた。

そして、出来上がったのが以下のキャッチコピーだ。

 

「岡山生まれで肉じゃがが得意なママが、貴方をお待ちしています。」

 

つづく