2013年09月01日

2016022理系学生採用キャッチ

営業促進的なキャッチコピーは、わかりやすさが大事だ。特に一番インパクトがあるのは、具体的事実に基づくキャッチコピー。

私がリクルートに入社した時、企業の求人広告で、一番やってはいけないキャッチコピーと教えられたのは以下のようなものだった。

 

「当社は、21世紀にはばたく最先端企業です。」

 

リクルートでは、人生を大きく左右する就職活動において、採用側の企業の情報をできるだけ事実に基づいて伝達する広告設計が求められた。

実際、数多くの求人広告を作成するにあたり、優秀な学生を採用できるケースとそうでないケースの境界線がだんだんわかってきた。

まず、その企業のターゲットを設定する。「語学力のある学生」、「工学部の電気・電子系の学生」、「学部は問わず好奇心旺盛で、行動力のある学生」といった具合だ。次にその企業の優位性を把握し、ターゲットが欲する情報を表現加工する。

入社一年目の印象的な思い出がある。その企業は、栃木県にある中小企業だった。非常に良い技術を持っている企業ではあったが、郊外にあるがゆえに、なかなか良い学生が採用できていなかった。

そこで、そういった企業の課題解決に実績のあるライターさんと一緒に、この企業の採用広告に取り組んだ。打ち合わせ時に、ライターのTさんはこう言った。

「現場の技術者を、どうのせるかがポイントですね」

取材当日、採用担当者と現場の部長にお会いした。技術部長だけになった時、その部長は仏頂面で、無愛想だった。「この取材、果たしてうまくいくだろうか」という不安が襲ってきた。

その時、ライターのTさんがこう言った。

「それは、凄い技術ですね。ちょっとその部品を持って来て頂けますか?」

部長は席を立ち、しばらくして手に部品を持って帰ってきた。驚いたのは、今まで無愛想だった銀縁眼鏡の部長が、子供のように嬉々として一気呵成に喋りだしたことだ。ライターさんも事前に調べていたデータをぶつけながら、どんどん切り込んでいく。同じ人物とは思えないような盛り上がりを見せた。

結果、できたキャッチコピーは、以下のようなものだった。そしてそばには、薄いスミで書いた部品設計図を掲載した。

 

「0.03ミリのレンズの偏光が、新しい機能を生む世界。」

 

今まで全く学生が採れなかったこの企業に、電気通信大東京電機大など12名に及ぶターゲット通りの学生から応募があり、3名の採用に結びついた。

私も採用担当者も、今までの経緯から比べると応募学生の層の高さに驚いた。

伝え方で状況は変わる。媒体の強さは勿論あるが、採用広告の影響の大きさに驚いた。同時に、その企業の魅力を引き出すための、取材の重要性を痛感した仕事だった。