2015年08月21日

究極のコンテンツ

新卒、中途問わず優秀な人材を採用するためには、何よりも彼らが知りたい情報を継続的に発信していくことが重要だ。

ただほとんどの企業WEBサイトでは、“掲載している情報”と“求職者が知りたい情報”の間にギャップがある。また、スマホ対応をしていないというデバイス対応の課題も相当多い。

一番の課題は、求職者と採用側のベストマッチングを構成する最大要素、現場の情報量が不足していることではないだろうか。給与水準や労働環境も大事だが、特に職種別に求められるスペックとそれらの仕事での活用イメージがつくかどうかだ。

仕事のリアルな中身が感じられ、その仕事を通じて自分がその会社でどう成長できるか。このご時世、誰も定年までその会社で働くとは考えていない。優秀な人材ほど、付加価値を求めている。お給料をもらいながら、その会社でスキルを上げ、人脈を築く。自分の市場価値が上がるイメージが持てるかどうか、そのリアリティこそが、求職者が一番知りたいものだと思う。データもそれを示している。

企業選び

特に仕事のヤリガイは、一番重要だ。仕事を通して自分がどう成長できるか、そして社会にどう貢献できるか。昔NHKで好評を博したプロジェクトXは、仕事の醍醐味を伝える優良コンテンツの見本でもある。

瀬戸大橋

リクルート在籍時代に、貴重な話を聞いたことがある。

金沢の老舗酒造企業が、後継者対策のために新卒採用を開始したいという。募集職種は、杜氏といわれるものだった。杜氏とは、日本酒の醸造工程を受け持つ職人集団や蔵人の監督者、酒造の最高責任者のことだ。ご存知の通り、日本酒の製造工程は難易度が高く、そのノウハウは門外不出だ。

その当時は日本全体の景気はバブルの様相を呈し、どこも採用難の状況に陥っていた。ソニーや野村證券といった有名企業でさえも、リクルーターを総動員して採用人数をなんとか確保していた時代だ。逆を言えば、就職活動中に学生はよほど高望みをしなければどんな会社にも入りやすかった。そういう状況下での採用活動だった。

リクルートの担当営業マンは、あえて仕事の本質を伝えることにこだわった。浮ついた美辞麗句を並べたところで、現場に入ればすぐわかること。応募人数を稼いだところで、現場に定着し、戦力にならなければ採用活動の意味はない。

双方のコミュニケーションの結果、リクルートの新卒向け求人誌に多ページ展開で杜氏のリアルな姿がドキュメンタリーで描かれた求人広告が掲載された。

杜氏イメージ

その時の衝撃は、今でも覚えている。「21世紀へ羽ばたく未来へ」のような抽象的なアプローチが散見される原稿の中、「それは、午前4時に始まる。」といった厳しい杜氏の仕事の中身が現場のモノクロ写真とともに展開されていた。

どうやら担当した制作マンとカメラマンは、1週間ほど現地に泊まりこみ、杜氏の密着取材したらしい。季節は真冬。北陸の冬は、当然厳しい。吐く息が白くなりながら、大きな樽をかき回す杜氏の様子が描かれていた。まさに職人の世界だ。

その結果、従来応募が全くなかったこの会社に、数名の応募が来た。地元の大学生、東京の有名私大の学生など、今までの応募層とは全く異なった。モチベーションも高かった。

この事例は、一つの採用活動のモデルを示していると思う。一つ一つの仕事には、どんな仕事でも必ず社会的存在価値がある。それに共感するのが真のターゲットであり、真のターゲットと仕事をつなげることが採用活動の本質だ。その本質を見誤ると、企業は衰退してしまう。