2014年11月17日

ニュースアプリ

20141117ニュースアプリ1

スマートフォンの普及による影響は、スマートフォンサイトのニーズの拡大だけでなく、アプリビジネスの機会拡大にもつながっている。

ニュースアプリは、機械で自動的に回遊して情報を収集・編集したり、編集者が自ら編集したりして、コンテンツを制作する。

ユーザーが一番欲しい形に、いかに近づけるか。そこが、アプリのダウンロード数を稼ぐキーだと思う。

人とカネが集まる新バブルの震源地

暑さが残る9月半ば。東京国際フォーラムで開かれた広告業界イベントーアドテック東京の広い会場を埋め尽くす人々の視線の先には、今をときめく新興メディアの旗手の姿があった。

「メディア業界は100年に一度の大変革期を迎えている。その中で世界一の経済メディアを目指す」「将来は世界で1億人が使うサービスを目指す」-未来の飛躍を信じてやまない彼らの言葉には、混沌とする新聞、テレビ、出版業界からは感じられない前向きな熱いエネルギーがみなぎる。討論会終了後には登壇者との名刺交換に長蛇の列ができた。そんな新たな。ITバブルの主役は、スマートフォンでニュースが読めるニュースアプリだ。

スマホのディスプレーに並ぶ、四角いアイコンの一つひとつがアプリだ。アイコンに指で触れると、ゲームや電話など多様な機能が利用できる。アプリはスマホ向けのアプリ提供サイトで選び、インーターネットを通じて無料または有料でダウンロードして使う。その件数が急速に伸び、バズっている(話題になっている)ご分野の一つがニュースだ。

ここ1年ほど新規参入が相次いでいる(上図)。ニュースを総合的に掲載するマス層を対象としたものから、経済やアニメ・漫画などジャンルを絞って専門性を高めたものまで、主要なものだけで数十のアプリが乱立し、大混戦の様相を呈する。
 
その中で比較的早くからサービスを提供し頭一つ抜けているのが、「Gunosy(グノシー)「SmartNews(スマートニュース)」「LINENEWS」「Antenna(アンテナ)」の4つの無料アプリだ。ダウンロード数はいずれも数百万に上る。これはゲームアプリでもヒットとされる水準だ。男性ビジネスパーソンだけでなく、これまでニュースを読まなかった若い層や女性を取り込み成長につなげている。

ダウンロード数約600万と最多を誇るのがグノシー。今年3月からテレビCMを開始し認知度が急激に上昇した。マス層を対象に「エンタメ」「社会」などのカテゴリー別にニュースを一覧で表示している。

◆他サイトの記事を集め利用者ごと内容に変化

グノシーを含めニュースアプリ会社は、自ら取材して記事を書きはしない。新聞社やウェブ専業媒体などが自社サイトヘ配信する記事を、機械が自動で収集したり編成担当者が選んだりして、アプリに掲載する。

利用者は、新聞社などのウェブサイトやアプリを直接使うよりも効率よく幅広い情報を収集できる。フェイスブックなどのSNS(交流サイト)上で話題の記事を多く、人々の関心事を追うのにも適している。グノシーは利用者のSNSでの行動を分析して記事を推薦。スポーツ好きにはスポーツの記事が多めに掲載されるなど、記事提供元にはない付加価値を提供している。

関取が記者に扮するCMでおなじみのスマートニュースも、グノシーと同じくマス層を狙った総合ニュースアプリだ。両アプリの見た目は見分けがつかないほど似ている。しかし実際に使ってみると、「記事データを読み込むのを待たずに快適に使えるようにこだわった」(鈴木健会長)とい弓高速表示ではスマートニュースに軍配が上がる。電波の圏外で読めるようにしたのも画期的だ。

無料通話・メールアプリのLINEが独立アプリとして提供しているL‐NEWSは、エンタメ系の話題が充実し、若年層に人気。編集部が選んだ記事を柔らかい「ですます」調に直し、スマホ画面に収まる3段落に要約。全記事に大きく写真を添える。「元の文章よりもカジュアルなタッチを目指している」(島村武志上級執行役員)。

写真中心のデザインが目を引くアンテナは、休日の過ごし方などの生活情報が中心。「実生活での行動に役立つ情報を、雑誌のように楽しく提供する」(杉本哲哉社長)ことを主眼に置き、女性の支持が高い。女性タレントのローラを起用したCM効果もありダウンロード数を約400万に伸ばした。

◆カネは大量に集まるが儲かる仕組みが見えず

ダウンロード数だけではない。カネまでバズっている。新興企業にもかかわらず、資金調達が半端でないのだ。

今年はグノシーがKDDIなどから6月までに24億円を調達。使い道はほぼCMで、すでに10億円以上を投じている。スマートニュースは8月にグリーやミクシイから36億円を調達。同社もCMや、10月から配信する米国版アプリの開発に充当する。経済分野に特化したNews Picks(ニューズピックス)も8月までに4・7億円を調達。図解記事や外部筆者による連載など、独自コンテンツの制作を加速する。出資者の1社である講談社は、今秋創刊する男性向けファッションの電子雑誌を同アプリ向けに配信する。

 
もっとも各社はまだ確固とした収益源の確立に至ってはいない。グノシーはCMへの先行投資がかさみ前2014年5月期は売上局3.6億円、営業赤字13.6億円に沈んだ。IT業界に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚氏は「調達額から見て、そうとうな収益を出すことが期待されている。専門性の高いアプリでないと課金は難しく、広告がカギ」と見る。だがスマホ広告は単価が低く、各社は高単価が見込める新型広告の開発で試行錯誤している。

もう一つの課題は、記事の提供元との関係だ。提供元は人件費、取材費などのコストをかけて良質な記事の制作に努めている。が、多くのニュースアプリは提供元から配信の許諾を得ているだけで、対価を支払っていなかった。リンクで配信元サイトに送客しているから、というのが理屈だが、ただ乗りしていると言われても否定できないだろう。

ニュースアプリ各社も提供元を疲弊させるビジネスモデルに危機感を持ち始めた。今年6月にグノシーが広告収益の一部を提供元に還元する制度を開始。ネットニュース元祖のヤフーも、提供元を支援するサービスを10月に始める(上囲み参照)。ただし、還元するには元手となる収益を上げることが大前提だ。

成長性への期待から群がる天資本の投資過熱の一方で、各社は持続可能なビジネスモデルをまだ模索中。市場が本格的に立ち上がる前に提供メディアともども干上がってしまっては、元も子もない。