2014年11月13日

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JINSが、クリスマス限定モデルを発売するらしい。

ご存じJINSのメガネは、PCやスマホから発するブルーライトを半減し、目を保護してくれる。昨今の子供はゲーム機やスマホに慣れ親しんでいるため、目の負担も大きい。

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今回の企画は、そういった子供達へのサンタクロースからの贈り物というわけだ。

そんなユニークな企画を打ち出すJINSは、どのように成功したのか?新規ビジネスという観点から分析したレポートを以下に紹介したい。

発売2年で250万本!目が良い人のメガネ「JINS PC」

視力が悪い人が使うものという固定観念を打ち破り、爆発的に売れているメガネがある。ジェイアイェヌのパソコンメガネ。どんなふうにして新規顧客を獲得しているのだろうか。

◆ターゲットの拡大に合わせた三段階のプロモーション 

ヒット商品の中には、用途を変更したり新機能を付け加えたりすることによって、まったく別種の商品ができ上がり、新規顧客を獲得することがある。

今回紹介するジェイアイエヌの「JINS PC」は、メガネでありながら、視力矯正を主目的とするものではなく、眼精疲労の軽減を目指したものである。パソコンやスマートフォン、そしてゲームやテレビなどが発するブルーライトを効果的にカットするこの商品は、2011年9月30日の発売以来快進撃を続け、累計で250万本超もの販売量を誇っている(13年7月末現在)。

この商品の開発の発端は、実に興味深いものだ。

それは同社代表取締役社長・田中仁氏の実体験に根差している。彼はメガネービジネスを本業としながらも実は視力がよく、矯正のためのメガネを必要としない人だ。そんな彼が、10年ほど前からパソコンに向かうたび、やたらと目が疲れることを感じ始めた。仕事柄、大学病院や眼科学会の研究者との交流の多かった彼はある日、眼精疲労の悩みを専門家に相談した。すると、ブルーライトが原因なのではないかとの指摘を受けたという。

ブルーライトとは、波長が380~495ナノメートルの青色の可視光線である。これは、LEDディスプーから発せられており、可視光線の中では、最もエネルギーの強いものである。もちろんブルーフイト自体は、群青の空からも放出されており、それ自体が目の健康を害するものではない。しかし、その波長は可視光線の中では最も紫外線に近く、かつ上記の通りエネルギーが強いので、長時間これを浴び続けていると、眼精疲労を引き起こす可能性が高い。また、この光線には覚醒効果があり、就寝前に目に浴びると、体内時計を狂わせたり、睡眠の質に影響を及ぼしたり、そのことが原因となって仕事の効率が落ちることがあるのだ。

JINS PCは、この種の障害の改善を目指したものである。この商品はもとより、同社の商品づくりに貫かれているコンセプトはとてもユニークだ。社内では、「目のよい人がかけるメガネ」とはどういうものかについて常々議論がなされているという。このような逆転の発想の下、これまで花粉対策用の「JINS花粉Cut、ドライアイ向け用の「JINS Moisture」など独創的なメガネが開発されている。例えば、「JINS花粉Cut」は、今年1月28日に発売し、わずか1~2ヵ月で完売。それも、昨年の約4倍の量を準備しておいたにもかかわらずだ。
 
画期的なヒット商品を世に送り続ける同社の組織は一体どのようになっているのだろうか。マーケティングコミユニケーション室リーダーの池川志帆氏によると、新規ブランド開発の際には、「生産部門、品質を管理する部門、商品企画の部門、マーケティングの部門、ECを担当する部門などが、それぞれ責任者を一人ずつぐらい参加させてプロジェクトチームをつくります」とのことである。そして、「(池川氏のような)プロジェクトリーダーが決まると、すごく不思議なことは、商品が生まれる最初の段階から最終的にどうやって販売するかという、最終段階までロングスパンでチームの進行管理を(彼女が)行うようになります」と同室広報リーダーの中島英摩氏は説明する。

同社のプロジェクト組織は一種のブランドーマネジャー制と言い換えることができよう。一人の管理者がブランドの開発から市場化までの全プロセスに目を配り、マネジメントしていくのである。この方式は、顧客志向の視点でシステム全体を管理でき、非常にマーケッタビリティを高めることができ
る。加えて、この方式ではリスクの低減も可能になる。

JINS PCのように売上局が急成長する商品の場合、「生産部門が工場をどう稼働させるのか。流通部門がどう店舗に商品を配布すればよいのか。在庫をどう管理すればよいのかといった課題に対し、適宜方式を変えていかなければならないのですが、それが(プロジェクト)チームだとすごくわかりやすくなります」と池川氏は語る。つまり、各部門の代表者が集うプロジェクトチームであるがゆえに、リーダーはシステム全体を連続的な有機体として俯瞰することができ、それの管理、運営の柔軟性を格段に高めることができるのだ。

また、同社の組織の柔軟性を象徴するものとして、「フリーアドレス制」がある。

驚くべきことに、同社では社員個人のデスクが存在しない。つまり社員は出社後、どこに座っても構わないのだ。もちろん、パーティションもなく、置かれているデスクも、オフィスによくある引き出し付きの個別アスクではなく、ひたすら長いテーブルが続いているだけなのだという。これは多様な部署の人と自由な打ち合わせを可能にする仕掛けである。もちろん、プロジェクトの会議は定例的に実施するのだが、それはしっかりとしたアジェンダを用意し、各自が意見を固めてから臨む公式の場という位置づけだ。

フリーアドレス制は、その公式の会議以前あるいは以後に、多様な部署の人と忌憚なく意見交換できる工夫であり、創発性を高めるインフラといえる。

このような自由度の高い組織風土の中でJINS PCは生まれたのだが、その普及過程で同社は、ターゲットの拡大に合わせ、三段階の緻密なプロモーション活動を展開している。

11年9月の発売当初のターゲットは、「ITコア」であった。この時期には、「ブルーライト」という言葉自体が一般に認知されていなかったので、同社はLEDディスプレーのヘビーユーザーを囲い込むことにした。普段から仕事でプログラミングに携わるような四六時中パソコンディスプレーに張り付いている人々が「ITコア」なのだが、まずこのような長時限ブルーライトを浴びているハード・ダメージャーにトライしてもらい、パソコン用メガネが本当に効果があることを実証してもらうと同時に、その有効性について情報発信してもらうという手法をとったのだ。これが同社の言う「情報開発」だ。

また、オフィスに1000円引きのクーポンを付けたりリーフレットをゲリラ的に配布した。この効果は素晴らしいもので、「いろいろ調査をしていきますと、企業の中の課内で、誰か一人がかけ始めると、周りの三人ぐらいが買ってくれるという現象が起きていることがわかってきました」と池川氏は指摘する。「ITコア」は、まさにパソコン利用のプロであり、信頼性のあるオピニオンリーダーである。彼らを活用した情報開発を約半年ほど続けることにより、JINS PCは数万本売れるヒット商品に育っていった。

その次の段階のターゲットは、「ITマス」と呼ばれる人々である。これは「ITコア」のようにヘビーユーザーではないものの、ツールとしてパソコンを日常的に使用している層である。一般的なビジネスパーソンや学生などがこれに当たる。これらの人々をターゲットとするステージには、12年5月から入っている。この時期には女優の蒼井優を起用したテレビCMを開始し、「パソコンからはブルーライトが発されていて、それをカットするにはJINS PCを利用するといいですよ」というメッセージを送り、幅広いビジネス層に響くようなコミュニケーション活動を実行した。

そして、累計販売本数が100万本を超えたて12年11月から第三段階が発進している。このステージでは、「一般マス市場」をターゲットに据えたプロモーション活動を展開している。テレビCMをさらに強化し、人気アイドルーグループ「嵐」の楼井翔をキャラクターに起用した。女性受けする有名アイドルの起用により、ユーザー層の変化が見られたという。このあたりのマーケットの動向について池川氏はこう語る。「それまでJINS PCのユーザーさんの五割五分ぐらい、が男性だったのですが、そのタイミングから女性のほうが多くなりました。おそらく楼井君という人の持つ力によって、女性がかなり入ってきたと思っています」。現在でも僅差ではあるものの、女性ユーザーのほうが多いという結果になっている。

◆顧客を次々と拡大させた情報開発と環境開発
 
JUNS PCに限らず同社では需要拡大のために積極的にコラボレーションを実施してきた。田中社長の「ある意味でメガネがメディアのようになるときもある」という革新的な思考に基づき、有名キャラクターとのコラボレーションを積極的に進めているのだ。これまでアニメの「ワンピース」「エヴァングリオン」、そして「ウルトラマン」といった大人気キャラクターとのコラボーモデルを開発してきた。

JINS PCに関しては、13年7月19日から「宝生家執事影山モデル」を発売している。これは同年8月3日に封切られた映画「謎解きはディナーのあとで」とタイアップしたモデルで、テレビCMも製作されている。

その他、13年8月10日からは、アニメ「ワンピース」のオリジナルーモデルの発売を行っている。「ワンピース」は言わずと知れた超人気アニメであり、コミックスも日本での発行部数が累計で約2億9000万部にも及ぶ強力コンテンツである。以前にもワンピースとのコラボを行い、その際には累計で30万本ほど売れたそうだが、シリーズ第四弾となる今回のコラボでは初めてJINS PCのオリジナル・モデルが開発されている。池川氏は、「ワンピースの場合、コアのファンだけでなく、何となく好きという人もたくさんいて、まさに広がりがすごいのです。JINS PCも今買うか、買わないか迷っている人が多いと思いますので、このタイミングで欲しいけれどきっかけがないという人々に最後のひと押しをしようと考えています」と戦略意図を語る。

プロモーション活動を積み重ねていく道程で大きなビジネスチャンスの拡大が二つあったという。

一つは、組織の一括導入である。日本マイクロソフト、ヤフージャパンなどのIT系企業が、業務効率改善のため、組織としてJINSPCを導入したいと申し出てくれたそうである。また、12年5月にパソコンやゲーム機の使用機会の増えた子供たちの目を守るために開発された「JINS PC for kidsが、東京都杉並区立和田小学校に導入され、(社)日本PTA全国協議会の推薦商品になっている。これはアイウェアの分野では、日本初の快挙であるという。さらに、22年11月から、京都府立医科大学附属病院・放射線科でJINS PCが活用されている。これは、CT、MRT、エックス線などの画像診断にあたり高輝度モニターを使用し続ける医師たちの眼精疲労の軽減を目的とするものだ。大手IT企業や教育機関、医療機関でのJINS PCの採用は、この商品の高い機能性を裏付けているといえる。

いま一つは、販売網の拡大であった。かつてJINS PCは、直営店でしか取り扱っていなかった。それが眼科医で扱ってもらえるようになり、最近では家電量販店にも陳列されている。

12年10月から家電量販店最大手のヤマダ電機の都市型店舗「LABI」で販売が始まった。また、ヨドバシカメラでは、旗艦店の「マルチメディアAkiba」で同年9月から先行販売を開始し、11月からはそれ以外の店舗やオンラインーサイトで販売し始めている。このような販売網の拡大を同社は、「環境開発」と呼んでいる。

これまで視力矯正のツールと考えられてきたメガネを「誰にでもかけてもらえるもの」と発想し、柔軟性の高い組織で独創的な商品を開発し続けるジェイアイエヌ。「情報開発」と「環境開発」に励む同社には、今後さらなる成長が約束されているように思う。