2014年08月17日

20160227Google仕事術

20140816グーグル式仕事術

トヨタの次は、あのグーグルである。

グーグルは今や検索大手企業ではなく、巨大なコングロマリット企業になりつつある。

Google初代日本支社長の村上憲郎氏の「アメリカ人は、とにかく前に行け!という姿勢が非常に強い」という言葉が今でも印象強いが、そういったエネルギーが今でも満ち溢れている印象がある。

そこには、世界最高の人材を集め、その能力を最大限に発揮できる環境を作り、“オープン&フェアー”のスピリッツを保ちながら結果を出し続ける合理性がある。

その現場模様を詳しくレポートしてくれているのが、今回の記事だ。

今後Googleがどうなるのか、非常に興味深い。

グーグル式

グーグル社員が有能なのは言うまでもないが、なによりもすごいのがそのスピード。グーグルの製品を使った超効率的な仕事術を、社員自らが解説する。

①丸見えの予定表ー「上司・部下の24時間」全員把握

◆メンバーの予定を一瞬で調整

根来香里さんはグーグルのシニアマーケティングマネージャー。「グーグル+」や「グーグルマップ」といった主力サービスのマーケティングを担当する。プロジェクトのまとめ役として、社内外のさまざまな職種の人だちといくつものミーティングをこなすのが日課である。

「平日の昼間はほとんどミーティング(笑)。普通の人に比べたら圧倒的にミーティングの数は多いと思います」と根来さん。

根来さんの1週間の予定を、クラウド上でスケジュール管理ができる「グーグルカレンダー」で見せてもらった。ミーティングなどで予定はびっしり。仕事相手の人たちもたいてい別のプロジェクトを抱えており、ミーティングなどのスケジュール調整は大変そうだ。そのときに重宝しているのが「カレンダー」の共有機能だ。

20140817グーグルスケジュール管理

関係者の「カレンダー」を共有しておき、主催者(この場合は根来さん)が参加してほしいメンバーの空き時間を見つけ、それぞれに「インビテーション」をメールで送信する。受け取ったメンバーが同意するとミーティングの時間が確定する。
 
それができるのは、全員がスケジュールをオープンにしているからだ。グーグルには「情報はできるだけ共有したほうが仕事をしやすい」という共通認識がある。ただし、実際の予定ははっきりしたものばかりとは限らない。たとえば、確定していなくても何らかのアポが入りそうな時間や、事務作業を進めるために確保しておきたい時間がある。また、グローバル企業のグーグルは海外拠点とのテレビ会議も盛んだが、時差のある相手から早朝や夜間にテレビ会議の「インビテーション」が届き、対応できないケースもある。

そのため、2歳の娘を子育て中のセントジョン古畑美樹さん(広告営業本部 広告代理店ビジネスマネージメント統括部長)は、保育園への送り迎え時間など予定をあらかじめブロックしておくという。セントジョン古畑さんの「カレンダー」にはその部分が「DNS(DO Not Schedule)」と表示されるが、送り迎えに限らず予定が入りそうな場合は、詳細を示さないまま時間をブロックしておくことができるのだ。

しかし、そうなるとスケジュール調整はますます難しい。たとえば「この上役に前の予定を15分だけずらしてもらえれば会議ができる」ということも珍しくない。そんなとき、根来さんはためらわず上役の執務室へ走る。そして「アシスタントに事情を話し、可能なときは予定をずらしてもらいます」。
 
それには、日頃のコミュニケーションがものをいう。当然ながら、Web上だけではなく、リアルな人間関係を築いておくことが大切なのだ。

②アイデア量産ーSNS使って他人の知恵を拝借

◆30分以内に回答がもらえる
 
「グーグルに来てびっくりしたことはいろいろあるんですけど、一番はこれですね。つまり、部門をまたいだ質問がすぐにできちゃうということ」
 
アメリカ生まれの陽気な営業マン、椎名エパレットさん(エンタープライズ部門セールスマネージャー)がこういって身を乗り出した。

椎名さんは別の外資系IT企業からの転職組だが、前職時代は「ある製品について、たとえば『このバグいつ直るの?』と相談をしたいとき、いくつものハードルをまたいでいかなくちゃならない。個人的にエンジニアと仲良しだとか部門のトップ同士が親しいとか特別な事情がないと、すぐには情報にたどりつけなかった」。大組織にありがちな弊害だ。

20140817グーグル アイディア量産

ところがグーグルでは、社内向けにWeb上で質問を投げると『だいたい30分以内に答えをもらえる』という。ルートはさまざまだが、たとえばメーリングリストの機能を果たす「グーグルグループ」。グーグル社内では日本法人全社員、アジア太平洋地域でYouTubeに関わる人間など、いくつものグループが設定されていて、そこへ質問をアップすると、クループに属した事情に詳しい社員から素早く返答が届くという。

また、グーグルではSNSサービス「グーグル+」を社員同士の情報交換ツールとして活用しており、こちらに質問を投げても同じように迅速なタイミングで「親切な答え」が返ってくる。たとえば、こういう具合だ。

「僕は日本国内の大手の製造業や運輸業向けにグーグルのサービスを販売しているのですが、アメリカのほうが先進的な取り組みをしているケースも多い。そこで、たとえば製造業に関するアメリカの事例やレポートがないかな、と思ったときに『グーグル+』のコミュニティを通じて質問を投稿します。すると顔を見たこともない人から、いろんな情報がポンポン、ポンポン人ってくるんですよ(笑)」
 
一言だけの返信もあれば、関連資料のリンクが貼られていたり、相談すべき人のリストがついていたりする。グーグル社員はおそらく、自分の知識を人に教えるのが大好きなのだ。

椎名さんにしても「もらいっぱなし」ではなく、業務上詳しいことや、たまたま知っていたことが「グループ」や「グーグル+」で話題になっていたらすぐに情報をアップする。
 
この美風は、システムの優秀さによるというよりも、個々人のメンタリティによるものだ。しかし、優秀な人は基本的に「教えるのが好き」である。「グループ」や「グーグル+が、その性質を発揮しやすくしていることは事実だろう。

◆国境を越えて、知恵を絞り合う
 
広告営業本部のセントジョン古畑さんの場合、海外の同僚とのやり取りから、仕事へのヒントをもらうことが多いという。

「アジア太平洋地域あるいは世界中のグーグルに、私と同じように広告代理店営業をしている人がいるわけです。国は違ってもグーグルという価値を売っているのは同じですから、みんなで知恵を絞り合えばいい。日本市場の攻略を外国の人に聞いてもわからないだろうと思い込むのは違うと思います。営業のときにどういうストーリーを立てたらいいかとか、有用なデータがどこにあるかとか、そういう気づきを『グーグル+』を通じていっぱいもらっています」

気になるのは質問の仕方。「ポイントを絞って論理的に書く。できれば個条書きに」。そんな社内ルールがありそうだが、実際にはもっと緩やかだ。

セントジョン古畑さんは、世界のグーグラーたちに質問を投げかけるときも「明日までに提案書を書くんだけど、あのデータはどこだっけ?」のように「ぼわっとした、独り言ふうに上げておく」という。
 
対する答えも「あの人が知っいるんじゃないの?」「このリンク先にあるよ」とカジュアルだ。
 
現実は常に流動的で、ビジネスのための時間は限られている。書式を守るよりスピードを大事にしたほうが結局はよい結果につながるというコンセンサスがグーグルにはあるのだ。

③他部署と連携プレープロジェクト専用サイト設置

◆情報共有で参加意識を高める

マーケティング部の根来さんは本業以外に、グーグルが主導する東日本大震災の被災地支援事業「イノベーション東北」のマネジメントも担当している。グーグル社内のほか、東北の現地企業の人たちなど関わる人が多く、それぞれの立場やネット環境もさまざまだ。メンバーは全部で30人ほど。
 
一方、根来さん自身はプロジェクトの専任ではないので、この件に割ける時間は限られている。そこでフル活用しているのが、「グーグルサイト」という特別な知識がなくてもWebサイト、が構築できるサービスだ。

「まず『グーグルサイト』でプロジェクトサイトを立ち上げ、どこに何の情報を入れればいいかという章立てをします。それが私の仕事のカギだと考えています。あとはたとえば、気仙沼や釜石にいるコーディネーターと呼ぶ人たちに、どんどん情報を入れてもらいます」

一ヵ月弱で作り上げたという「イノベーション東北」のサイトをのぞかせてもらった。プロジェクトの概要やコーディネーターのプロフィール、記者発表の資料、落選案をすべて含めたロゴマークのプランなど、さまざまな情報が画面上にわかりやすく配置されている。

このサイトを完成させたのは地方在住のコーディネーターを含む、プロジェクト参加者全員である。もしこれを事務局(根来さん)だけが集中管理するスタイルで進めていたら……。

「いろんな方にまずメールを出して情報提供をお願いし、テキストや写真データーを返信してもらう。それが集まったら、サイトの書式に加工して順次貼り付けていく……。そういう手順で進めると思いますが、作業に時間をとられるうえ、伝達ミスや誤解によって、いくらかロスが生じていたかもしれません」

結果、プロジェクト全体の進捗が遅れ、メンバーの士気が下がってしまうおそれもある。根来さんが取り入れたのは、メンバー個々の関与によってサイトの完成を早め、さらにプロジェクトヘの参加意識を高めるという一石二鳥の仕組みである。

「まずサイトを立ち上げて、この部分へ何日までにこのような情報を入れてくださいとお願いします。すると、みなさんも『締め切り』意識を持って関わってくれるようになるんです」

「サイト」を設置する目的は情報共有である。「イノベーション東北」に限らず、グーグルではプロジェクトを進める際に、関与するメンバーが常に誤解なく同じ方向を向くように情報の共有を徹底している。

「ふつう部分的な仕事をする人は、全体像がなかなか見えません。『フロジェタトの概要』について一度はレクチャーを受けるでしょうが、それでは忘れてしまうかもしれません。思わぬ誤解によって仕事が脇道にそれていったりしないように、何か目的なのかといった大事なポイントについては、常に確認できるようにしてあります」

◆社内外の人間へ平等に資料公開

とりわけ情報公開が大切なのは「社内だけではなく、社外の人が参加する場合」だと根来さんは考えている。
 
マーケティングのプロジェクトには通常、国内外のWeb制作会社など多数の取引先が参加する。たいていはグーグルの仕事に専念しているわけではなく、別のクライアントの別のプロジェクトにも関わっている。

20140817グーグル 資料共有

彼らの意識をグーグルのプロジェクトに向けてもらうため、グーグルはできるだけ細かいデータまでオープンにしているというのだ。もちろん、社外には出せない資料もある。線引きはどこにあるのか。
 
「人にお願いしてプロジェクトを進めていく立場からすると、一緒に働く人とか、とくに別の会社に所属する人に対して、どれだけ気を使えるかということがすごく大事だと思うんです。社内の情報を全部公開することはできませんけれど、社内向けの資料にひと手間かけて、外部に出せる状態にしてからサイト上で公開する。情報をできるだけ共有することで、現場がスムーズに回るんです。一緒に働くメンバーがどれだけハッピーかが仕事のバロメーターになっています」

④30分会議ー時間内に結論を出し、議事録も完成

◆一番重要なのは「宿題事項」
 
グーグルの会議は独特だ。30分を1単位とし、会議を進めながらその場で簡易な議事録を作成する。議事録は出席者の1人が日付、参加者、議題、合意事項、宿題事項といった項目をクラウド上の文書に書き出していき、必要があれば他の出席者がこれに加筆する。使用するのはクラウド上で文書作成・管理ができる「グーグルドライブ」のドキュメントだ。

20140817グーグル30分会議

特にエンジニアの会議は、1単位30分を徹底。だが、営業やマーケティング部門の場合、関連部署との確認事項も多く、30分で終わらないこともある。

「でも、1時間ミーティングの時間を取ろうと思っても取れない。社員が使っているグーグルカレンダーは、最大50分単位でしか予定を入れられない設定なんです」(セントジョン古畑さん)

1時間ではなく50分なのは、移動および準備時間を10分みて、その分をあらかじめ差し引いてあるからだ。50分の会議のあとは10分インターバルを挟んで、すぐに次の50分に集中するという効果もある。

古畑さんによれば「取引先との会議は別として、少なくとも社内会議では、誰がどう発言したかまで記録する詳細な議事録をとったり、その後印刷して全社に配ったりということはしていません」。なぜなら「時間がもったいないから」だ。
 
事実、グーグルの会議では議事録の体裁はごくシンプルだ。ほとんどの場合、A4用紙に相当する「ドライブ」の文書一回だけで事足りる。
 
会議の進行にあたっては、司会進行と書記、タイムキーパーなどの役割を決めておく。一回きりの会議は別として、定期的に開く場合は役割を固定化せずに参加者の持ち回りにするという。メンバー全員に参加者意識を持たせるためだ。

「その日の主題に大きく関わる人が司会進行を務め、あわせて書記をすることが多いのですが、ときにはルーレットで役割を決めることもありますよ。そのほうが楽しいから(笑)」

グーグルの会議で一番重要なのは、次の行動につながる宿題事項アクションアイテム=AI!だ。

「ミーティングの最後には必ず『じゃあ、』と呼びかけて確認をとります。誰が何をいつまでにどうするか、それを決めるのが会議ですから」

20140817グーグル議事録作成

◆疑問には「即回答スピーディーに!

外部とのミーティングが多いマーケティング部門の根来さんは、会議のときに社内の専門家をほんの5分だけ呼び出すことがあるという。

「専門的なことに関して社外の方から質問をいただいたときに、あとで問い合わせて、後日ご説明するという手順をとると時間がかかりますよね。ところが、営業や技術の専門家がその部屋へ5分だけ来てくれて説明してくれたら、それだけで会議2回分くらいの課題が解決します」
 
涼しい顔で根来さんがいう。もちろん、5分間だけ無理をきいてもらうためには、関係づくりが大切だ。普段からエンジニアや営業マンとランチを一緒にとったり、単に立ち話をするだけでも気心は知れる。これが会議の効率化にも役立つのだ。

20140817グーグル クラウド上文書

ところで、ネット回線とPCとWebカメラさえあれば、オフィスの会議室へ出向かなくても会議に参加することは可能である。そのとき活躍するのが、グーグルのテレビ電話システム「ハングアウト」だ。
 
ハングアウトが優れているのは、画面上で他のソフトを動かしながら複数のバングアウト両面を同時に表示できるという点だ。クラウド上の同じ資料を読みながら、画面の隅でテレビ会議をすることができる。

「プライベートなことですが」と前置きして、セントジョン古畑さんがこんな話をしてくれた。

「夫の両親がアメリカのアルバカーキーに住んでいまして、もう70歳近いのですがハングアウトでよく話をします。『グーグル+』で写真をよく見たいのだけど、どこを押したらいいのかな? ということを聞かれたときに、ハングアウトと同じ画面で開いていますから、ここをこうして操作してくださいとすぐに説明できるのです」

テレビ会議にも応用できそうな話である。