2014年08月16日

20160227トヨタ仕事術

20140816トヨタ仕事術1

日本を代表するエクセレントカンパニー、トヨタ。

その企業力の根底には、日々の業務改善力がある。

トヨタ関連の本は数多く出版されているが、ここまで現場の改善手法を明らかにしたレポートは今までなかったのではないだろうか。

そう思えるほど、詳細でわかりやすい特集記事だ。

プレジデント2013年9月16日号から、以下紹介したい。

トヨタ流

トヨタの強さを支える「トヨタ生産方式」75年以上にわたり脈々と効率化を積み重ねられたこの手法を、デスクワークに応用してみよう。

【必ず結果を出す技術】

◆①トラブル対応ー「5回のなぜ」で原因を因数分解する

新入社員から叩きこまれる手法

どんな会社・部署でもトラブルは付きものだろう。トヨタもまたしかりであるが、そこで働く社員には強力な武器がある。「5回のなぜ」だ。
 
トラブルに直面したとき、トヨタ社員は「なぜそれが起きたのか」を繰り返し考える。すぐに思いつく答えを安易に結論とせず、真の原因を探ることが目的だ。トヨタ生産方式の生みの親である元副社長の大野耐一氏が提唱したと言われる考え方で、トヨタ社員は新入社員のときから徹底して叩きこまれる。

早速、彼らの思考のプロセスをたどってみよう。まずは左の例題に挑戦していただきたい。

20140816トヨタフィッシュボーン

ある営業部に在籍する課長が、部下たちの新規顧客への訪間数が少ないことに気付いた。このゆゆしき問題をどう解決したらいいかを探るという内容だ。

今回、多くのトヨタ出身トレーナーが所属する人材育成支援会社OJTソリューションズ・大鹿辰己氏と岡内彩氏に解説していただいた。まず見てほしいのが、左の図だ。魚の骨のような形をしているが、これがトヨタ式思考を凝縮したものである。

「まず手をつけるべきは、露呈した問題のおおよその原因を洗い出すことです(これが大骨部分にあたり、上の例題では「メンタル」「行動量」「スキル」が該当)。その際、3C(市場・顧客、競合、自社)や、4P(製品、価格、流通、PR)、4M(方法、材料、機械、人)といったフレームワークを使うと原因を見つけやすいです」(大鹿氏)

これが要因解析における第一の「なぜ」。ただし、要因であって、真因ではない。さらに「なぜなぜ」と追求するのである。

浮かび上がった「メンタル」「行動量」「スキル」という要因。次はそれらをそれぞれ掘り下げて「なぜ」を繰り返し、中骨や小骨を抽出していく。たとえば、「スキル」の少なさ、に焦点を絞ってなぜを繰り返してみよう。なぜ「顧客にうまく説明できていない」のか。スタッフに聞き取り調査をすると、「商品知識が不十分だった」とわかった。

要因が出そろったら、手を打てば、再発防止ができる真因はどれかを突き止める。「効果」と「実現性」の点から考えると見抜きやすい。例題の場合、最終的に真因は「相手状況の認識不足」と「商品知識の不足」「人と話すのが苦手」に絞られた。

「なぜ」の追求を「うまく説明できない」の段階で終えていれば、真因にはたどりつけなかったことがわかるだろう。

◆正真正銘の「真因」はどこにあるか

「なぜなぜ、としつこくやるほど、どんどん骨が出てきます。そうやって発見したたくさんの大骨、中骨、小骨のなかに真因が隠れている。一見、どうってことのないように思えることが問題解決の核心をついていることがよくあるんです」(同)

20140816トヨタ報告書

例えば、ある工場で、ラインが突然停止するトラブルが発生したとする。担当者に聞くと、止まった原因は、「モーターに負荷がかかりすぎた結果、配電盤のヒューズが飛んだ」というものだった。つまり、1回目の「なぜ」でわかったのは「ヒューズ、が飛んだから」。これでも一応の理由にはなっているが、トヨタではそこで終わらない。

なぜ、モーターに負荷がかかりすぎたかを考えたことで(2回目の「なぜ」)、モーターの潤滑油が不足していたことが判明。さらに、その潤滑油不足の原因を探ると(3回目の「なぜ」)、ポンプの性能に難があり、十分に潤滑油をくみ上げていないことがわかった。

もう真因にたどりついたかと思えば、さにあらず。なぜ、ポンプの性能が悪かったのか調べると、ポンプの軸が磨り減っていた。そして、その軸はなぜ磨少減ったかー実は、潤滑油をためるタンクの中にラインから出る切り粉(切削屑)が大量に混入し、それがポンプの軸を異常に磨り減らしていた。これが、正真正銘の「真因」だったのである。
 
「トヨタでは真因をひねり出したら、すぐその対策の立案・実施をしますが、それが功を奏さないときは真因の出し方が悪かったのではないかと、真因探しのやり直しをすることは珍しくありません」(同)

②素晴らしい報告書ー「7つのステップ」をA3用紙1枚に

◆対策立案では終わらない

トヨタ社員は問題解決のための7つのステップ(場合によっては八つ)を新入社員研修のときから繰り返し教えられる。さらに、そのステップによって導かれた結果をA3一枚にまとめるという習慣が根付いている。

「自分や会社が抱えている問題などについて、社員は日常的にこのやり方を使っています。入社1年目、4年目、8年目の社員研修時には大量の課題を与えられ、それをA3資料にまとめるという特別な時間が設けられます。現在のトヨタが置かれている立場についてどう考えるか、などキャリアが上がるにつれ、課題内容のハードルは高くなっていきます」(前出・大鹿氏)

早速、その方法論を学んでいこう。例題は前回に引き続き、ある営業部が売り上げアップのため、営業部隊のボトムアップを図るという課題に対して、その解決策を探る報告書を作成せよという内容だ。
 
手順を追っていこう。まずⅠの段階では、「本来あるべき営業部隊の姿」と「現状」を確認して、そのギャップを明確にする。Ⅱでは、数値的に現状把握をするため、昨今の営業の衰退ぶりについてグラフなどを用いて洗い出す。そのうえで、Ⅲにおいて今後、営業活動をどの程度増やすかという目標設定をする。こうしたプロセスの肝となるのが、前幹で例示した、「フィッシュボーン」による要因解析(Ⅳ)。「なぜ」を繰り返し、課題の真因を見つけ出していく。
 
I~Ⅳを踏まえ、Vの段階で本格的な対策立案に移る。例題では、「営業部員には人と話すのが苦手な人がいる」という原因を真因ととらえ、それに対して、「毎朝のミーティングなどのときに一分間スピーチをするなどして人前で話す訓練をする(半年継続)」という対策を立てることになった。

「トヨタでは対策を立てておしまいではなく、その後の評価方法や、対策の効果が高く出るように、また効果が長く持続されるように。標準化(定着)するための方策も立てます」(同)

七ステップの各項目を、具体的かつ論理的に整理しながら書き出していく。こうした作業を繰り返すことで、トヨタ式の深い思考回路が完成するのだ。

③業務のムダ取りー作業を4つに分類し、見える化

◆その移動は本当に必要か

トヨタ社員の仕事ぶりはみな、効率的で、速い。肝はムダ取りにある。例題は企画書作成時のムダ排除をトヨタ式でやるというもの。一見ムダなど存在しないように思える作業だが、前出・大鹿氏は語る。

20140816トヨタ業務のムダ取り

「なんとなく書き始める。これが諸悪の根源です。まずは業務の目的が明確なまま、始めること。あやふやなまま進めて軌道修正を迫られれば、結果として時間がかかります。企画書作成前には、どんな狙いがあり、どこに評価ポイントがあるのか、何度も自問してください」

「仕事」は、4つに分類できるというのがトヨタ式の考え方。

①主作業(例題では企画書の文書作成)
②付随作業(文書を作成するための情報収集)
③準備・後始末作業(上司に企画書の要旨説明)
④ムダ・例外作業(ぼんやり時間など)

となる。

「仕事を分類して見える化すると、注力すべき①が何かはっきりします。①に時間とエネルギーを配分しながら、②~④の作業をする。②では、情報収集時に本案件に無関係な情報には見向きしないこと。③では、事前準備として、過去、社内に類似の案件がなかったか調べる。あればそれをたたき台にして、時間を節約するのです」(大鹿氏)

仕事のノウハウや培った人脈は「人に教えたくない、俺の宝物」となってしまいがち。しかし社内の共有財産化したほうが最終的に会社にも社員にもメリットが大きい、と大鹿氏は語る。

業務を分類したら、5つのムダを探す。

①品質のムダ
②滞留のムダ
③歩行・移動・流れのムダ
④種類・数量のムダ
⑤ミス・手直しのムダ

である。

企画書作成でいえば、パワーポイントにアニメーションを盛り込むのは①にあたる。凝り始めると時間に際限がなくなるが、その割に説得力はあがらない。情報収集のためだと遠隔地の支社まで出向き社員の聞き取り調査をするのは③にあたる。移動の時問がかかるので電話やメール、テレビ会議にすべきだ。

例題ではムダ取り術によって、当初540分かかったものが310分ででき、四時間近く早まった。その結果、注力すべき作業にあてる時間の配分を増やすことができたのである。

④デスクの片づけー使わない書類は1日、名刺は1年で処分

◆「整理整頓」は「整列」ではない

「机の上を整理しなさい」-。

小学生時代から教師や親に言われ、職場でも上司に注意される。にもかかわらず、整理の習慣が身に付いていなかったりコツがわからなかったりする大人は少なくないだろう。例題にあるような雑然とした光景が常態化したビジネスパーソンも多いに違いない。間違い探しの要領で、デスクのカイゼンに挑戦していただきたい。

20140816トヨタ デスクの片づけ

製造現場で数多くの部品を扱うトヨタの場合、「片づけができていない」状態は、まさに命取りだ。仮に間違って部品をとりつければ、品質不良が発生し、クレームが殺到してしまうからである。そこでトヨタでは有名な「5S」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を社内マナーや雑務のレベルではなく、最優先事項の「仕事」として習慣的に実践しているのである。

「片づけをしないと4つのムダが出ます」と前出・大鹿氏もきっぱり語る。

その1つめは「スペースのムダ」である。不必要なモノがあふれればオフィスや製造現場はそれらに侵食され、社員が空間を有効活用することができない。

2つめは「時間のムダ」だ。モノが混在していると必要なモノを探し出すのに時間がかかる。大鹿氏によれば、仮に1日計30分間、探しものをしているとすると年間で約7200分(約15日分の勤務時間に相当)も時間を浪費していることになるという。3つめは前述した「間違えるムダ」。案件の異なる資料ファイルを会議に持参しても役には立たない。4つめは「取りに行くムダ」だ。例えば、コピー機を頻繁に利用するにもかかわらず、遠くに設置してあると、何度も行き来しなければならず移動する時間がかかってしまう。

「こうしたムダがなくなれば、自然と仕事の効率化をはかることができ、売り上げを伸ばすこと、ができます」(大鹿氏)

大鹿氏を含め、多くのトヨタマンにとって「整理整頓」の4文字には深い意味がある。キレイに揃えて並べるだけでは、単なる「整列」にすぎない。ひとたび乱れるとゴチャゴチヤ状態に逆戻りしてしまうので、片づけたことにはならない。

すなわち、整理=「いるもの」と「いらないもの」を分けて、「いらないもの」は捨てること。そして、「整頓」=「必要なもの」を「必要なとき」に「必要なだけ」取り出せるようにすること。当たり前のようだが、このシンプルで強い片づけのルールが全社員に浸透しているのである。

では、目の前にあるモノが「いるもの」か「いらないもの」か、どのように決めればいいのだろうか。その見極めが例題を解くポイントにもなっている。

「トヨタでは、『時間』が判断基準になっています。身の回りのモノは、①いま使う、②いつか使う、③いつまでたっても使わない、に大別できます。①は今日明日に必要なもので、③は即刻処分、と判断は簡単ですが、悩ましいのは②のいつか使う、です。ここで大事なのは、いつまでに使うかの期限を設けるという作業。例えば、資料が収められたファイルは直近の3ヵ月間はデスク上に保存(1ヵ月ごとに右から左へ並べる)し、その後は収納棚・引き出しなどへ移動します。名刺は1年間保存し、その間に使わなかった分は処分する。期限をできるだけ短く切ることがデスクを乱雑にしないコッといえます」(同)

名刺を捨てるのには抵抗があるかもしれないが、片づけに聖域なし。1年も付き合いがなければ、その後の接点はほぼないと思ってよい。連絡をする必要が生じたときも、会社の代表番号を調べれば何とか連絡はつくはず。業種や仕事内容によって、いつまでに使うかの期限は異なるが、個々人でその目安をつくっておくとよいのだ。

◆体の脇を空けずに取る

トヨタのものづくりの現場では「階層別教育」と呼ばれるリーダー教育もあり、そのプログラムには生産性を高めるための人の動きを研究した「動作経済」という項目がある。

端的にいえばこれは、よく使う道具であれば、「体の脇が空かずに取れるところ」に置くということ。つまり、使用頻度や利き手などを考慮してものを配置すればムダな動きは少なくなるということである。例題では、メモ用紙の位置を利き手側に置き変える、ということがトヨタ流「動的経済」の法則にのっとった配置ということになる。

さらに、トヨタ式の片づけは整理整頓という範躊をこえるから頭が下がる。

「デスク上をさらに作業しやすくするには、線を引くことです。ここの範囲内にはモノを絶対に置かない、と決めてビニールテープで区画線を張り、作業スペースを確保するのです。そうすると、不思議なものでむやみにモノが積まれることはなくなり、整理整頓の意識がしっかりと身につきます」(同)

ビニールテープで区画線を貼る考え方は、もっと応用が可能だ。モノを置かない場所を確保するだけでなく、モノを置く場所を決めてしまうのだ。

例題の場合、ファイル置き場に区画線を引く。区画線のなかにファイルがなければ、正しい場所にないということが一目瞭然。使いっぱなしで別の場所に置いたままということはなくなるのだ。