2014年08月12日

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脳科学者の茂木健一郎氏他、第一線で活躍する人々による編集力の正体とは?

企画書制作の仕事でも、どんな要素を組み合わせて魅力的なシナリオを創り上げるかが問われる。

個人的には、今後の日本のビジネスシーンでは異業種のコラボセンスが重要になってくる気がしている。

バイオと不動産、飲食とロボット、宇宙と車産業…。

そしてそこには、必ず冒険心と数字管理のバランスのとれたプロデューサーが必要なのだ。

プロが行き着いた「編集力」の正体

その「身につけ方」と「使い方」とは

脳科学、コミニュケーション、そして統計学。各分野の第一人者が、自らの体験をもとにビジネスにおける編集力を定義した。

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◆経験と意欲を高める

記憶の回路は常に編集され続けているし、その中で新しい結びつきが掛け算の要領で次々と発生し続けているので、「編集力」とは「創造力」と考えていいでしょう。突然、無から何かが生まれるということはありません。

従来の編集って縦のものを横にしてみたり、順番を並べ替えてみたりすることで、新しい視点を見つけ出そうという思考のように思われがちですが、脳のメカニズムから言うと、編集という思考はもっとも創造的なプロセスなんです。

編集力を磨くには、まず圧倒的な経験値が必要です。本を乱読する。好奇心をそそられる体験をする。たくさんの人から話を聞く。ネットワークを作る。こうした、脳に蓄積された経験というデータが百なのか、千なのか、1万なのかによって、人が発揮できる編集力は大きく異なります。

また、意外と見落とされがちなのは「意欲」で、こういうものを作りたい、実現したいというビジョンが大切です。意欲が低いとどんなに膨大なデータが蓄積されていても、脳は機能しません。

脳における編集のプロセスは意識ではコントロールできませんので、大切なのはアイドリングしている状態を作ることです。とくに今日のデジタル情報社会において、私たちの脳は常に「オン」の状態なので、これを意識的に断ち切って「オフ」の状態を作る必要があります。脳科学の分野ではこれを「デフォルト・モードーネットワーク(DMN)」といって、脳を休ませることで蓄積した情報を熟成させるという意味があります。

DMNの方法は人によってスタイルが違います。『20世紀少年』などで知られる漫画家の浦沢直樹さんは、仕事が進まない時は仮眠をとるそうです。重要な判断をする時には散歩に出かけると言ったのは、スティーブ・ジョブズでした。

◆「異質」を組み合わせる

2011年の独立まで、大手広告会社のクリェイティブーディレクターとして広告を手掛けてきました。一方で、『うまひゃひゃさぬきうどん』『沖縄やぎ地獄』など趣味の食や旅に関する本を書いたり、民主党政権下では内閣官房政策参与としてソーシャルメディア政策に関わったり。東日本大震災に際しては公益社団法人「助けあいジャパン」を立ち上げ、ボランティアを組織して支援してきました。

 
広告・食・ソーシャルメディア・政治・支援。これらすべての現場で仕事をする人に、僕は会ったことがない。どの分野でもトップではないけれど、網羅しているとなると僕しかいない。全く異なる五つの世界が自分の中で結びついて化学反応を起こし、結果的に僕が「エディット(編集)」している。一つの会社や組織、部署にいては身につかない能力だと思います。

 
ビジネスにおける「編集力」は必ずキャリアにつながります。段階を踏んで異なるスキルや考え方を吸収し、それを持って次の世界へ進む。「ドラゴンクエスト」の世界ですよ。ドラクエって、主人公がジョブチェンジして成長していくじゃないですか。ずっと戦士だと剣を振り回すだけですが、魔法を覚えると魔法を使える戦士になる。ビジネスの世界なら、組み合わせは無限。オンリーワンという言葉はあまり好きではありませんが、異質なもの同士が出合うところにこそ、新しいビジネスは生まれるのだと思います。

◆適切な「問い」を立てる

膨大なデータを分析して新しい文脈を見つけ出す作業を編集力とするならば、大切なのは「仮説」ではなく、「問い」を立てる思考だと思うんです。

「メディア露出を増やせばブランドイメージは上がる」と仮説を立てたとします。この質問の答えは「イエス」「ノー」だけ。でも、「売り上げを伸ばすためにはどんな方法があるか?」なら、答えは無限です。私はこれを「リサーチ・クェスチョン」=「問い」と呼んでいます。

さまざまな会社のデータ分析に関わっていますが、ビジネス現場では、顧客データなどを膨大に集めて分析すれば、何か有益な結論を導けると思いがちです。分かっても利益につながらない場合もある。前出の仮説「メディア露出を増やせばブランドイメージは上がる」がいい例で、ブランドイージが上がっても売り上げにつながらなければ、そのコストは無駄になります。

解析すべき指標は、直接的な利益か、そこに至る因果関係の道筋が明らかな何か。「データをどう解析するか」は、統計学の本を少し読めば分かるのですが、「どのようなデータを解析すべきか」はあまり知られていません。ビジネスにおける編集力とは、そうした定石を押さえて適切な問いを立てる力のことだと思います。