2014年06月26日

20160227生き抜く力

不安な時代を生き抜く働き方1

変化の激しい現代においては、刻一刻と働き方が変わる。変わらなくても上手くいければ良いが、TwitterやFacebookのようなプラットフォームが出現するたびに、ビジネス活動のみならず日常生活にも大きな変化が訪れる。

企画書作成の仕事の依頼を通じて、世の中の変化を感じることもしばしばだ。企画書提案の向こう側には、世相が見えてくる。

プラットフォームの営業でわかりやすいのが、新卒採用活動だ。Facebookが登場した後、企業の採用担当者はFacebookを採用活動に活用し始めた。従来の手法と比較して、より優秀な人材を採用する成功事例も多数出た。

そうした変化激しい時代を生き抜く働き方について、ニューズウィーク2012年4月18日号に、興味深い記事が掲載されていたので紹介したい。

不安の時代を生き抜く働き方

景気低迷やグローバル化で企業の在り方も働き方も激変
不確実さと複雑さを増すビジネス環境でキャリアを磨<のに必要なものとは

エンジニアのジョー・フェランは、「不確実」とはどういうことかを知り尽くしている。そして、その乗りこなし方もだ。

フェランは97年、家族と共にニュージャージー州からテキサス州ヒューストンヘの転居を余儀なくされた。勤めていた会社が巨大エネルギー企業エンロンに吸収合併されたためだ。その4年後の01年、エンロンが不正経理スキャンダルを起こして破綻。フェランはあっけなく失業者になり、経歴にも傷が付いた。

だが、フェランはめげなかった。妻の仕事に同行して05年にオーストラリアのブリズベーンに渡り、専業主夫に転身した。世界で一番大変な「ミスター・ママ」の仕事を通じ、かなりの忍耐と謙虚さが身に付いたという。

とはいえ、ただ漫然と毎日を過ごしていたわけではなかった。エネルギー効率の専門家で「無駄の削減」に情熱を注いできたフェランはあるとき、近隣地域で10代の若者の交通事故死が多いことに気付く。

命が失われるという最大の「無駄」を何とかしたいと突き動かされた彼は、工学のスキルを生かしてドライバーの安全性評価を行う方法論を編み出した。

物理の法則とGPS(衛星利用測位システム)やGIS(地理情報システム)などのシステムデータを組み合わせ、さらにエンロン時代に得たビジネススキルを生かして特許を取得。システムをアメリカの大手保険会社に売った。

現在は、オーストラリア最大の天然ガス・エネルギー企業AGLでエネルギー効率に関するプロジェクト開発に携わっている。

「仕事から少しの間離れることを受け入れられる姿勢があれば、予期せぬ紆余曲折さえも自分の強みにできると分かった」と、フェランは言う。「毎朝変わらず同じ仕事に向かう生活では、自分のキャリアについて戦略的に考えるのは難しかっただろう」

◆VUCA時代の到来

誰もがフェランのような積極性をもって、変化を受け止められるとは限らない。人間は進化の過程で常に、変わり続ける環境に順応する力を試されてきた。だが「いつでもどこでも互いにつながり合い、ますます複雑化する」今の世界ほど、その能力が必要とされる時代はない。

マネジメント研究者は現在の世界を言い表すとき、軍事用語を用いて「VUCA」と呼ぶ。不安定さ(Volatility)、不確実さ(Uncertainty)、複雑さ(Complexity)、そして曖昧さ(Ambiguity)の頭文字を並べた略語だ。この用語はまさに、07年の世界金融危機以降の状況を物語っている。

VUCAな時代の到来は、企業の在り方や人々の仕事に対する考え、働き方を大きく変えた。企業は下がり続ける一方の生産性に苦しみ、無駄の削減や従業員の厳選に走っている。労働者には今まで以上に、ネットワークや柔軟性を生かした働き方が求められるようになった。

世界金融危機の余波は、いまだ続いている。世界の失業者は2億人に上り、豊かな先進国で特に深刻だ。その上、さらなる雇用を生み出す力は世界中で低下している。

今のところ仕事にありつけている人も安心はできない。コンピューターやSNSの普及によって、仕事のやり方やスピードは永久的に変わってしまった。

「物事があまりに速いベースで進み、以前と同じ考え方ではやっていけない」と、アメリカのキャリアコンサルティング会社マスタリー・ワークスCEOで、『あなたのキャリアを動かすのは誰か―不安定な時代の安定した仕事』の著者でもあるケーラ・ファレンは言う。

「戦略的に考え、ネットワークを築き、学習速度を上げてミスを減らさなければならない。変化の風は吹き続けており、今後さらに加速する」

何より「VUCA」が強く感じられるのは、今のビジネス環境だ。国際貿易や世界のGDPなど一部の経済指標は金融危機前の水準に戻っているのに、雇用は特に先進国で一向に改善しない。世界の雇用がここまで悪化したのも、新たな雇用を生む力がここまで打撃を受けたのも、歴史上初めてのことだ。

◆24時間つながれた生活

最大の被害者は若者たち。若年層の失業率は12.7%と全世代の倍で、先進諸国では実に17.9%に上る。「心配すべきなのは、私たちの我慢の限界を超えるほどにこうした状況が長引きそうなことだ」と、ILO(国際労働機関)のエコノミスト、エッケハート・エルンストは言う。

不安な時代を生き抜く働き方2

金融危機以降に生産性がひどく落ち込んだため、先進国の企業は絶えず労働力の無駄を削ろうとしている。国外へのアウトソーシングはもはや常識。クラウド・コンピューティングの普及で、さらに多くの職が失われる可能性も高い。

ただし、雇用の流出を招いているIT技術が、ワークライフバランス実現に役立っているのも確かだ。稼いでは消費する暮らしに疑問を感じ、家族との時間や私生活を重視する傾向が強まっている労働者たちにとって、これは歓迎すべきものだ。

今では世界の5人に1人はIT技術を利用した在宅勤務で仕事をし、アメリカではフリーランスや起業家として働く人がここ15年間で最も多くなっている。

一方で、ある調査によれば、ニューヨーク州でフリーランスとして働く人の42%は、09年の1年間に少なくとも1度は報酬を踏み倒された経験を持つ。VUCAの環境下では、労働者が不確実な状況に甘んじざるを得ないのかもしれない。

しかも、不確実性は高まるばかり。今後、ネットを介したつながりは増えこそすれ、減ることはないからだ。どんなシステムにおいても「参加者」が増えれば複雑で不安定な要素が増加すると、専門家は指摘する。実際、ネットやSNSなどのIT技術が生むつながりによって、私たちの生活に直接影響を及ぼす個人や企業の数は急増している。

「今後10年で私たちは、常にネットワークにつながれた生活を送ることになる」と、カリフォルニア州パロアルトにある未来研究所のボブ・ヨハンセンは言う。「能動的にオフラインにする時間をつくらない限り、常にオンライン状態になる」

◆最高のスキルでは不十分

人がつながり、アイデアが共有されれば、商品やサービスが改良されるスピードも速まる。過去にはソニーのウォークマンのように、優れたヒット商品が数十年にわたって企業の経営を支えてくれた。だが今は、業界トップの地位を守るためには絶え間ない革新が求められる。

ソーシャル資金調達サイトの「キックスターター」を見れば、それが分かる。08年に起業家グループが開設したこのサイトは、起業を志す人々がアイデアを開示し、資金提供を募るシステム。これまでにレストラン経営からIT分野に至るまで1万5000件以上の投資プロジェクトが進められ、1億2500万ドルが投資されることになっている。

キックスターターが伝えるメッセージは明確だ―革新的なアイデアさえあれば誰でも、一流企業の高給取りのイノベーターと同じ土俵で勝負できる。

VUCAな環境では、与えられた仕事を忠実にこなすだけではもう通用しない。先進国の多くの企業は、今以上に生産性の向上を迫られている。アウトソーシングだけでなく、ソフトウェアやロボットを使用したオートメーション化も進む。

不安な時代を生き抜く働き方3

だからこそ、企業が従業員を厳選する傾向は強まっている。現時点で最高のスキルを身に付けているだけでは不十分。今後必要とされる新たなスキルを見極め、常に学び続ける能力を待った人材しか生き残れない。

「自分に付加価値を付ける方法が分からない労働者は、すぐに他の人材とすげ替えられるだろう。あるいはその仕事自体、インドにアウトソーシングされてしまうかもしれない」と、ファレンは言う。労働者一人一人が起業家としての意識を備え、自分自身を運営して日々の仕事を改革していく必要があるのだ。

「しかも、一度じっくり考えればいいというわけでもない。次に必要なスキルは何なのかと、毎日のように問い続けなければならない」

それが難しいところだ。仕事の負担は増え、労働者の時間は奪われる一方。その上ネットでつながった人々との付き合いも忙しい。これでは、自分のキャリア戦略を練る時間などとてもつくれそうにない。

だがその「つながり」にこそ、解決策が転がっている。オンラインサービスのおかげで、履歴書を管理したり更新したりするのも容易になった。同じ考えを待った人や専門家、良き相談相手といった豊かなネットワークも提供してくれる。SNSサイトを使えば、自分のキャリアや商品、スキル、ビジネス手法についてさまざまな人から意見を聞くことができる。要するに、オープンソースをフル活用できるのだ。

「やるべきことが多過ぎる、数多くのライバルに常に追われている、と思うこともあるだろう」と、ファレンは言う。

「だが同じ分野の人々とつながり、意見を交わせば、前進する勇気が湧くことも多い。全世界が、自分のものになる」

人や世界とのつながりを生かし、「持続可能なキャリア」をつくり出すには、自身の利益ばかり考える発想から抜け出さなければならない。社会や他者に奉仕するくらいのつもりで、熱意を傾けられる仕事に集中することが必要だ。

◆超柔軟になる戦略とは

従業員が企業に安定的に養われ、与えられた仕事で確実な報酬を得る時代は終わった。「労働をサービスと見なした原点に立ち返るべきだ」とファレンは言う。

「自分が熱意を持って取り組めることを見極め、そのサービスを必要としているのは誰なのかを突き止める。欲求はモチベーションとなり、情熱や専門能力はどんな変化をも突き抜けるキャリア上の道になる」

そうした能力を磨くには、労働者自らが能動的にキャリアを開発しなければならない。

「会社の決めた分野で与えられた仕事をし、会社がお膳立てしてくれる能力開発に乗るだけでは専門人材にはなれない」と、慶鹿義塾大学商学部長の樋口美雄教授は言う。

「同業他社のプロフェッショナルと交流したり、専門分野特有の知識を追求したりすることが求められる」

VUCAな時代のキャリア形成に必要な、新しい発想と行動とは何か。ハース・ビジネススクール(米カリフォルニア州)の上級講師ホーマ・バラミらは、変動の激しいシリコンバレーの企業を研究してある答えを導き出した。

彼らは、成功できる人材や会社に共通するものを「超・柔軟性」と定義した。柔軟な思考力やタフな精神力、ITや戦略を操る敏捷性など、さまざまな分野の要素を併せ持つ包括的な資質のことだ。「単に成り行きに身を任せる柔軟性ではない」とバラミは言う。「荒れ狂う海を航海するように変化に耐えなければならない。同時に、環境に応じて自らを変え、成長する能力も必要となる」

バラミに言わせれば、VUCAな世界で成功するためには、超柔軟な4つの戦略が欠かせない。

まずは、チーターのように「獲物(目標)」を根気よく執拗に追い掛けること。次に、生存を懸けて水分を体内に蓄えるラクダのごとく、最悪のシナリオを常に想定して備える。3つ目に、カメレオンのように周囲に迎合すること。ネットワークを広げ、チャンスが来たらすかさず適合する。4つ目に、腕を切り落とされても再生するヒトデのような回復力を備えること。

「車の複数のギアを備えるようなもの。状況に応じて自由にギアチェンジができる」とバラミは説明する。「ギアを握れれば、助手席の立場を抜け出し自らのキャリアを運転していくことができる」

そこから、VUCAというハイウェーを走り抜けるのだ。