2014年06月16日

20160227グローバル人材コスト

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昨日の『激論!クロスファイヤ』のテーマは、「アベノミクス第3の矢」だ。

政治家の塩崎恭久氏が出演していた。塩崎氏は、愛媛県松山市生まれだが、都立新宿高校卒業後、東京大学に入学。東京大学教養学部教養学科アメリカ科を卒業し、日本銀行に入行。その後、ハーバード大学大学院(ケネディスクール)を修了した。父親は、経済企画庁長官を務めた塩崎潤氏だ。

この時の番組を見て感じたのは、安倍政権以前の政権と安倍政権とでは、世界経済に対するスタンスが微妙に変わってきているという点だ。今回の安倍政権には、東大→コンサルもしくは東大→海外経験組が多い。つまり、合理的な考え方と外国人とのコミュニケーション経験がある人材が多い。先日の「農協発展的解体論」は衝撃的だったが、従来のマッチポンプ的な胡散臭さ満点の施策ではなく、現状を冷徹に分析した上での解決策的な施策・提言が多い気がする。まさにコンサルだ(笑)。

農協や労組上がりの政治家には限界があることを、民主党で痛感した国民が多いのではないだろうか。上記の塩崎氏のようなタイプの政治家が、今後増えていくような印象を受けた。事実、今日本の進学状況として、高校卒業後直接海外の大学へ進学する人が増えているらしい。

そんなことを考えていたら、以前買ったアエラに面白い記事が掲載されていた。タイトルは、『グローバル人材のコスト』。その中身を、紹介したい。

グローバル人材のコスト

高い教育費にもひるまない
英語教育や留学にかかる費用はピンキリだが、総じて高額のイメージ。
夢や将来の「先物買い」を、どう決断したのか。
海外に飛び出した6人に聞いてみた。

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任天堂のゲーム「マリオ」シリーズは、アイテム「スター」を獲得すると数十秒間は無敵になり、ダッシュの速度も上がる。

「今の僕はその状態。捨て身のタックルができる20代のうちに、行けるところまで行きたい」

早稲田大学4年の税所篤快さん(24)が言う「スター」とは、実家の支援のことだ。

途上国の農村の高校生に、その国トップレベルの教師の授業をDVDやネットで届ける「e-Education」を20歳で立ち上げた。世界各地を飛び回り、事業資金は常にカツカツ。同級生はすでに就職して
いるが、休学した税所さんは「実質7年生」。実家に「パラサイト」して家賃も食費もタダだからこそ、事業にのめり込める。

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「起業家は独立してこそ一人前で、親に支援してもらっているとは言いにくい雰囲気がある。でも僕は、最大のスポンサーは両親だと胸を張って言いたい」

東京都足立区に生まれ、公立の小中学校に通った。父親のように、「公務員になって安定したフツーの生活をする」ものだと信じていた。

都立両国高校に進学後、授業についていけなくなった。偏差値は28。落ちこぼれの居場所はなかった。社会を変えたいと思うようになった。

社会起業に関する本を読みあさっていた大学2年の時、バングラデシュで貧困層の支援活動をする「グラミン銀行」を知った。「これだ」。直感して本の著者に電話をかけ、夜行バスに乗って翌日には秋田大学まで会いに行った。その1ヵ月半後、旅費8万円を両親に借り、グラミン銀行の門をたたいた。

「行った先で何が起こるかわからなかったが、自腹を切ったことで真剣になり、結果的に人生が変わった。両親にはまだ返済できていませんが」

◆父に土下座して渡米

学生が海外で活動するには、経験や資金がハードルになる。税所さんは、両親以外にも積極的に頼っている。一橋大学イノベーション研究センター教授の米倉誠一郎さんに「弟子入り」。東大の研究費やユニクロの資金援助を取り付け、リクルート出身で元杉並区立中学校長の藤原和博さんからも寄付を受けた。

「僕は帰国子女でもエリートでもないけど、テストで苦しんだ経験があったからこの事業ができた。自分の物語を作り、それを情熱をもって具体的に伝えることができれば、世界中で人を巻き込んでいけるはずです」

大竹舞さん(32)は、山形県にある人口3万人ほどの市に生まれた。地元のスーパーに勤めていた父親はすでに退職、母親は自動車・電気部品メーカーで働いている。両親とも海外旅行の経験はないが、母からは「若いうちに海外に行ったほうがいい」と言われ続けてきた。外に目を向ける機会が少ない地方で、娘には視野や価値観を広げて欲しかったようだ。

中学3年の時、通信教育の教材にホームステイプログラムのチラシが同封されていた。カリフォルニアに2週間で約30万。安い金額ではなかった。

「お金がもったいない」

渋る父に土下座をして頼み、無理やり押し切った。その後も繰り返し父を説得し、大学4年でロンドン大学に私費留学。JICAタンザニア事務所でのインターンを経て、青年海外協力隊として西アフリカのペナンで活動。今はアメリカの大学院で国際開発学を学ぶ。

「幼い頃、食べ物を残すたびに『アフリカには十分に食べられない子どもがいる』と母に厳しく言われた。山形にいながらも世界に思いをはせるチャンスを与えてもらっていたんです」

◆国連職員目指すモデル

子どもに英会話を教え、異文化に触れさせ、海外体験をさせることが、最近のグローバル教育の傾向だ。それらは、当然コストがかかる。

例えば、ある幼児英語教材はフルセット70万、英会話教室は月6千円。海外に行くにも2歳以上12歳未満の航空運賃は大人の約8割かかり、全寮制の私立中学や高校(ボーディングスクール)は年間400万~1千万と高額だ。

しかし、実際に世界で活躍している人たちが、親が意図してコストをかけて育てた人ばかりかというと、そうでもない。

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経済協力開発機構(OECD)で医療制度改革を担当する村上友紀さん(35)は、雑誌「Can Cam」の元モデルという異色の経歴を持つ。青山学院大学に在学中、女優の米倉涼子さんらとともに活躍していた。華やかな世界に身を置きながら、高校生の時から目指していたのは国連職員。世界銀行コンサルタントから職員を経て、OECDのパリ本部で働く。

村上さんが海外に興味を持ったのは、小学校入学時。銀行員の父の転勤で東京に移り住んだ際、社宅があったのがたまたま外国人が多く住む高級住宅街だった。幼稚園にも公立小学校にも、肌や髪の色が違う同級生がいた。言葉が通じない子たちと遊んだり、世話をしたりするのが好きだった。

◆東大選ばず海外へ

「単純にいろいろな国の人と友達になりたくて、ちんぷんかんぷんでも話しかけていた。でも努力するのは苦手で…」

NHKのラジオ英会話を録音したテープはたまるばかり。大学時代は学時代はモデルの仕事が忙しく、留学も考えられなかった。単位不足で留年しそうになり、駆け込みで受けた授業で「厚生経済学」と「日本外交史」に出合う。卒業後もモデルを続けて学費をため、テキサス州立大学大学院へ。さらに親に教育ローンを組んでもらうなどして、ハーバード大学大学院に進んだ。

最近は日本人の若者の内向き志向が指摘され、国連職員の希望者も減っている。世界銀行にいた時にブログを始め、雑誌「AneCan」でも国際情勢を伝えるコラムを書いてきた。

「普段は堅い仕事をしていますが、日本に向けて情報を発信し、海外へのハードルを下げる役割を担いたい。最終的な夢は、“国連親善大使”くらい大きく持っています」

東大合格者数トップの開成高校出身の塩野皓士さん(19)が進学先にミシガン大学を選んだのは、高校2年の時に3万円で参加した1週間のサマースクールがきっかけだった。父親(65)は振り返る。

「家庭で海外進学に結びつくような経験はさせておらず、東大に行くものだと思っていた。ただ、息子が決めた以上はできる限り協力しようと思いました」

◆コスト理由に現状維持

そのサマースクールは、ハーバード大学など海外に進学した学生たちが日本の高校生に向けて企画。現役ハーバード大生による、実際のカリキュラムを模したワークショップが目玉だ。

「初めて『世界レベル』を体験して、自分の視野の狭さを知った」

と塩野さん。同級生3人で校長に直談判して海外の大学の情報をもらい、受験対策を転換。英語科の教師にマンツーマン指導を受け、留学専門の予備校にも通い、10ヵ月間でTOEFLのスコアを50点から100点に上げて16校に出願した。

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「無謀な挑戦に何も言わず自由にやらせてくれた両親には、本当に感謝しています」

ハーバードービジネススクール(HBS)でMBAを取得した石角友愛さん(32)が、日本の有名私立高校の教頭らに講演をした時のこと。コストに関する質問が集中した。

「アメリカの大学や大学院はお金がかかる」

「どうせ一部の金持ちのための教育ではないか」

石角さんはこう切り返した。

「現状を変える勇気がないのを、コストのせいにしているだけでは?そこで思考停止すると、前向きな議論はできない。資金がない人がどうすれば教育の機会を得られるかを、考えてほしい」

石角さんの両親は教育にかけるコストは惜しまなかったが、それでも壁にぶち当たった。HBSは2年間で1200万円ほどかかる。当時は日本で立ち上げた起業家支援ビジネスが軌道に乗り始めていた頃。「狙った獲物は確実に落としにいくタイプ」だが、さすがにひるんだ。

「仕事を辞めて高い学費を払ってまで、挑戦する価値があることなのか」

日本の奨学金の多くは給付対象が限られ、応募者が殺到する狭き門。HBSからの奨学金の不足分は、借金するしかなかった。国民生活金融公庫(当時)で200万円を借りたものの雀の涙。組合員融資を申し込むために生協に加入したが、対象外と言われた。現地で7%もの高金利の学資ローンを組んだ。

「個人の資金力には限界がある。やる気のある若者に、国や財団が資金援助している国もある。国レベルで支援していかなければ、裕福な家庭の子しか留学できないままです」

◆リターンを最大化

せっかく投資したなら、得るリターンを最大化する努力も必要という。HBSのネットワークを生かすには、各業界に卒業生が散らばっているアメリカのほうが有利、とシリコンバレーで起業した。

「大きな投資ほど、回収するまでには時間がかかる。でも、投資をしなければリターンも得られないんです」

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最大の投資の真っ最中なのが、森本創さん(32)だ。昨年8月から、6歳と4歳の息子を連れて世界一周旅行をしている。モンゴル、ペルー、カメルーンなど7大陸7力国に約3ヵ月ずつ滞在。最終国ベラルーシから12月に帰国予定で、妻のおりえさん(30)は3人目を妊娠中だ。

07年の結婚当時、貯蓄はゼロ。資産運用などで出発までに1千万円をためた。旅の資金は、交通費261万円、宿泊費149万円、食費75万円、幼稚園費28万円、滞在国での国内旅行に96万円……。安全や健康面での出費は惜しまず、治安の良い地区の物件を借りる。予防接種に37万円、海外旅行保険には92万円かけた。

森本さんは大学時代に国連ボランティアなどで海外に滞在したが、「もっと早く世界を見ておきたかった」という思いが拭えなかった。

「30歳までに世界を一通り見たかった。『多様な価値観や文化に触れる』という子育て方針を実践し、家族で24時間一緒に過ごすことも、子連れ旅行の目的でした」

◆記憶よりも体験

出発の10日前、8年勤めた旭硝子を退職。安定した生活基盤や福利厚生を失うことに迷いはあったが、新たな人生のための一歩だと前向きに考えた。

「子どもが幼すぎて、記憶に残らないのでは」とよく言われるが、記憶よりも「体験」が重要だと思っている。

「周りの大人に一面的な情報を与えられても、それがすべてではないと気づくはず。地球規模で己の存在の小ささをポジティブに実感し、驕ることなく絶望することなく、瓢々とご機嫌に生きてほしい」

帰国後は兵庫・西宮から岐阜・飛騨に移住し、地域活性化の仕事をする。自然豊かな地方での暮らしで、子どもたちの「多様性」の引き出しはまた増えそうだ。

そこまでコストをかけられない場合は?森本さんは言う。

「購読する新聞を1年ごとに替えるだけでも、リベラルな感覚が身につくのでは」

NPO留学協会理事の岩崎宗仁さんもこう助言する。

「雲行きが怪しい日に、親が傘を持たせないで子どもに任せる。こんなささいなことも、自ら考えて判断できる自立した人間に育てる一つの方法です」

コストゼロの「グローバル教育」を工夫できる家庭こそ、恵まれた環境なのかもしれない。